【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第6章 私と場地さんと場地さんみたいな人と
誰がババアだ、誰が。この人、年上を労るどころか罵詈雑言がひどいんですけど。まったくもう! と思いつつ場地さんの後ろをキープ。私をババアや呼ばわりした罪は重いんだからな!
場地さん家から数分歩いたところにあるコンビニでお目当ての下着にメイク落とし、歯ブラシなどを片手にレジで支払いを済ませる。雑誌コーナーでバイク雑誌を読んでいた場地さんのところへ行って声をかければ「見てみろよ」と雑誌を差し出されたので覗きこむ。当たり前だけど、そこにはたくさんのバイクとライダーが載っていて思わずテンションが上がる。
「このハーレーのカスタムかっこよ!」
「ホイールよくね?」
「いい! てかこの革ジャン最高にかっこいいな。え、やば」
「アメリカンと革ジャンは鉄板だよな」
「ほんとそれ」
「コレ買ってくるワ」
レジに向かっていった場地さんを見送ってから雑誌コーナーに目を向ける。はた、と目に入ったのは結婚雑誌。……私も、そろそろ結婚できると思ってたんだけどなぁ。私の元カレと後輩が仲良くしていたのを思い出して、おもむろに気分が下がる。私の何がだめだったんだろ。
表紙のモデルさんがブーケを持ちながら美しく微笑んでいるのがとても羨ましい。仕事だから笑ってるんだ、なんて言われたらそれまでだけど、私もウェディングドレス着たい。
あー……そう言えばお母さんに恋人と別れたって言ってないや。言ったらお見合いとかセッティングされそう。それはそれでイヤだな。
「ちゃん?」
「──えっ? あ、もう買い終わった?」
「おう」
雑誌を持った手を軽く上げて、買い物が終わったことを知らせてくれる。いけない、自分の世界に入りすぎて場地さんが来たことに気づかなかった。
気づかなくてごめんね。と声をかけるが、場地さんは私が見ていた雑誌を穴が開きそうなほど凝視している。まだ元カレのこと引きずってるんか、って呆れてるのかな……。少しいたたまれなくなって下を向いたけども、パラパラと雑誌をめくる音が聞こえてきてすぐに顔をあげる。するとそこには私の予想通り、結婚雑誌をパラパラとめくっている場地さんの姿があった。
……どうしたんだろ。場地さん、彼女いないって言っていたよね?