【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第6章 私と場地さんと場地さんみたいな人と
「……ここ、場地さん家ってこと?」
あちらこちらを見渡せば私が今日来ていたアウターをハンガーにかけてくれてあって、こういうちょっとしたところにも場地さんの優しさを感じられて心が温かくなる。
起こそうかどうしようか悩んでいると、足元で「ニャア」と声が聞こえて視線を下ろす。そこには長い毛並みを自慢げにふわふわと揺らした猫ちゃんが、私の足にすり寄って声をあげた。……だ、抱っこしてもいいかな。
ごくりと息を飲んで猫ちゃんに手を伸ばすと、彼? 彼女? はスルリと私の手をすり抜けて場地さんのお腹の上に飛び乗った。
「んぐっ……ヨンフォア……急に飛び乗ってくんじゃねぇよ」
ヨンフォアと呼ばれた猫ちゃんは、我関せずと言った表情で毛繕いを始めた。もちろん場地さんのお腹の上で。というか猫ちゃんの名前もバイクから来てるとか、本当にバイク好きなんだなぁ。
「オマエ、でっけーから重いンだよ……って、ちゃん?」
「うん、ちゃんだよ」
「起きたのか。体は大丈夫か? 頭とか痛くね?」
「大丈夫だよ、迷惑かけてごめんね?」
「いや、勝手に俺ん家連れてきちまって悪いことしたな。送ってやろうにも住所わかんなくてよォ」
ワリィ。と言いながら欠伸をする場地さんに首を横に振る。悪いのは酔い潰れて寝こけてしまった私の方だ、場地さんは何も悪くない。
「私帰るからさ、場地さんベッドで寝てね」
「今から帰んの? 明日、朝早いのか?」
「いや、十三時出勤だけど」
「俺も昼前出勤だからこのまま泊まってけよ。朝になってから電車かタクシーで帰っても遅くねーだろ」
「遅くはないけど……私、邪魔じゃない?」
「邪魔だったらそこらへんに捨ててきてるワ」
「人権を尊重します」
いや待てよ、そもそも場地さんは人権とは何か知っているのだろうか? まずは人権から教えなければいけない気がする。