【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第5章 私と場地さんとクリスマスイブと
「君たち、年上をもっと敬いたまえよ?」
「いきなりどうした? 腹減って頭おかしくなったか?」
「そういうとこだぞ」
「つくねうめェ!」
「そういうとこだぞ!」
ちょっと一発殴ってもいいかな?
「どーした? 食わねェの?」
「……」
「ちゃ──ああ!? 何勝手に俺の砂肝食ってンだよ!」
「そこに砂肝があったから」
「新しいの頼めよ!」
「場地さんの砂肝がちゃん食べてーって言ってる気がして」
「砂肝が喋るわけねーだろ!」
ふん! とそっぽを向いている間に場地さんは私のつくねを奪い取り、大きな大きな口へと半分ほど放り込んだ。それを見て思わず私も「あ"あ"!」とおっさんのような声をあげてしまう。この人! 私のつくね! 食べやがった!
口を開けながらわなわなしていると「つくねが俺に食べてーって言ってたワ」なんて言いやがった。誰だよさっき砂肝が喋るわけないって言ってたの。
「ご両人、仲いいねぇ!」
「おじちゃん! つくねもう一本焼いて!」
「砂肝も!」
「はいはい。おじちゃんがサービスしてやっから痴話喧嘩はそんくらいにな」
「チワワ喧嘩?」
「ワが一個多いよ」
付き合ってる男女がくだらないこととかで喧嘩することだよ、と教えてあげたら「なんだ、チワワじゃねーのか……」とちょっとしょんぼりしていた。本当に動物が好きなのね。あと付き合ってるってところも否定しないのね。
「あ、そうだ。ちゃんに渡すもんあるんだった」
「私に?」
なんだろう? 思い当たる節がまったくない。そう思いながら鞄をガサゴソ漁る場地さんをジーッと見つめていると、中から可愛らしいクリスマスラッピングされた小さな箱を取り出していた。──え? もしかして。
「メリークリスマスっつーことで、やるワ。一日早いけど」
「ほ、ほんとに?」
「こんなんで嘘つかねェし」
「……開けてもいい?」
「おう」
両手のひらサイズのそれを慎重に開ける。破れないように、ゆっくりと。可愛い包み紙から出てきたのはここの近くにあるケーキ屋さんの箱。それを開ければ、今度は小さなマドレーヌが二つとサンタクロースとトナカイ、そして雪だるまが描かれたアイシングクッキーが姿を表した。