【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第5章 私と場地さんとクリスマスイブと
「ちゃんは、あの女のことどう思ってる?」
「菅野さん? んー……ちょっと距離感が取りづらくて苦手なんだけど、仕事ぶりとか見てるといい子だなぁって思うよ」
「ふーん、いい子ねぇ」
「え? 自分から訊いといてそれだけ?」
「俺は──」
何か言いかけていた場地さんの動きがピタリと止まる。このあとに続く言葉を待っていたが、ゆっくりと口を閉じて「やっぱ何でもねェ」と一言呟いた。
「え、気になるじゃん」
「世の中には知らなくてもいーことがあンだよ」
「余計気になるし」
「まぁアレだ。セイリテキにムリってやつだ」
「おぉう、生理的に無理」
それ、菅野さん改善のしようがないやつじゃん。本質的に無理ってことだもんね。人の好き嫌いまで動物的なんだね、場地さんは。なんだか納得。
「俺はさ」
「ん?」
「誰にでも優しくできるような人間じゃねーってこと」
「ほほう。だからさんにも優しくないのか、場地さんは」
「あー? 優しくしてんじゃん」
「本気か? 本気とかいてマジなのか?」
どうやら優しいについて、私の認識とバジさんの認識ではずいぶんと差があるらしい。確かに優しくしてくれるときはある、あるよ? けどそれに負けないくらい雑な扱い受けてるよね、私? あれか、場地さんは好きな子をいじめたくなるタイプか?
嫌われているとは思っていないけれど、好かれている自信もないわ。残念ながら。……場地さんにとって私ってなんなんだろう? 飲み友達かな。
「ちゃんもさ」
「ん?」
「あんまあの、スガノ? とか言う女と関わンねー方がいいと思うぜ」
「えぇ……同じ仕事場だよ? それ難しくない?」
「仕事辞めれば?」
「簡単に言ってくれるね」
「XJショップこいよ」
「お、それはちょっと楽しそうかも」
「だろォ?」
つくねと鶏皮、砂肝を追加注文しながら自分がペットショップで働いているところを想像する。場地さんにからかわれ、一虎さんなバカにされ、千冬さんに慰められる。そんな未来が見えるわ。……あれ? 私、一番年上よね? 年上だから敬ってくれてもよくない? よくないっ?!