【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第5章 私と場地さんとクリスマスイブと
そう笑う場地さんのお会計を済ませ、外は寒いからとお店の中で待っててもらうように伝えると他の人の邪魔にならないよう、壁に寄りかかって私を見送ってくれた。退勤するために急いでロッカールームに向かい制服から私服へと高速で着替える。ついでにちょっとだけお化粧直し。口紅を軽く塗り、口をんぱっと動かして発色を確認する。ん、いい感じ。
鞄とコートを引っ付かんで受け付けのところに戻ると、こんな短時間だったにも関わらず、場地さんは菅野さんに絡まれていた。菅野さんの場地さん察知能力高すぎて笑えるんですけど。
「圭介さん、このあとは空いてますか?」
「空いてねェ」
「先輩とご飯とかですか?」
「オマエには関係ないだろ」
「私には菅野彩音って名前があるんですからぁ!」
「だから?」
菅野さんに対する場地さんの当たりが強すぎてちょっと驚く。私の扱いも相当雑だと思うけど……何て言うのかな、菅野さんに対しては「オマエとは関わらない」って意思表示をひしひしと感じるかも。そしてそんな場地さんの塩対応にもめげることなくアタックする菅野さん。そこまでいくともう尊敬の域です、はい。
声をかけるタイミングを完全に失い、突っ立っているとメンドくさそうな顔をした場地さんが不意にこちらを向いて目があった。「あ」と漏れた私の声に菅野さんもこちらを振り向く。
「せんぱぁい! 今から圭介さんとご飯ですか?」
「あ、うん。そうだよ」
「私も仕事終わるんでご一緒していいですかぁ? 彰人さん今日はお仕事だから二十二時以降しか会えなくて、それまで暇なんです」
まさかの提案に面食らっている私が言葉を発するよりも早く。場地さんは──。
「は? ダメに決まってンだろ」
と言って菅野さんをはね除けた。強い。二人ともメンタルつよつよだ。
「オマエの彼氏が仕事とか俺らにはどーでもあいし」
「でも、一人じゃ寂しくって……」
「知らねーよ。寂しいならクラブでも行ってれば? 誰か構ってくれンだろうよ」
「そんな言い方しなくてもいいじゃないですかぁ……」
「じゃあアレか? 邪魔だから着いてくンなって言えばよかったか? 鬱陶しいってよ」