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【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました

第5章 私と場地さんとクリスマスイブと


 中に入ると短パン一丁の場地さん。壁にかけてあるガウンは使わなかったらしく、綺麗な肉体美を惜しげもなく披露してくれている。めっっっちゃ腹筋割れていますね、シックスパックだ。細マッチョって場地さんのためにある言葉な気がしてきたよ、うん。
 そんなことを思っていると「見すぎだろ」とデコピンをされてしまった。見せてるんじゃなかったのか。

「腹筋スゴい」
「筋トレしてるからな」
「っていうかガウンは?」
「どうせ脱ぐなら着なくてもよくね?」
「確かに」

 ごもっともな指摘をされて頷く他ない。そう思いながらカウンセリング用紙に目を落として思わず無表情になる。……字、汚っ! いや、読めなくはないけどさ、読みやすいかって言われたら読みにくいよ。
 探偵にでもなった気分で文字を読みとく。どうやら肩凝りとか首凝り、足がだるいとかそういうのは全くないらしい。めちゃくちゃ健康優良児ですね。オネーサンからしたらめっちゃ羨ましいわ。

「じゃあそこに仰向けで寝てくれる?」
「こうか?」
「ん、じゃあマッサージしてくね。オイルつけるから少しひんやりしますよー」
「響きがエロい」
「そういうお店じゃありませーん」
「俺にも相手の女選ぶケンリはあっから」
「は? あとで覚えとけよ」
「口、ワリィな」

 わざと痛くしてやろうか。そんなことを思いながら場地さんのデコルテに手のひらを滑らせる。少し力を入れて、でも優しく、撫でるように手を動かすと、気持ち良さそうに目を閉じる場地さんを見て心の中で安堵の息をついた。知り合いに施術したことなんて今まで何度もあるけど、今日はなんだか一段と緊張するわ。

「力加減はどう?」
「ちょうどいい」
「じゃあもっと力強くするね」
「話聞いてたか?」
「聞いてた聞いてた」
「不安しかねぇ」
「何言ってんの。オネーサンに任せときな」
「不安しかねぇーーー」

 そう言ってケラケラ笑う場地さんに「次腕しまーす」と声をかけてから腕に触れる。私とは違う筋肉質なそれに少しドキドキしながら優しくほぐしていく。上腕から始まり肘のリンパ節、下腕、手の甲、指、手のひら……他愛もない話をしながら意識を自分の手に集中させる。
 そうでもしないと今すぐにでも心臓が破裂しそうで仕事になりそうにない。私が今、どんな気持ちでいるのか知らないんだろうなぁ。この人は。そう思うと無性に腹が立ってくる。
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