【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第5章 私と場地さんとクリスマスイブと
今までの付き合いでわかったことがある。場地さんは──おつむがよわよわだ。少し難しい単語を使うと片言で聞き返してくることが多いし、デリカシーを菓子のデリバリーだなんていう大人を私は初めて見た。もはや尊敬に値するレベル。こうなりたいかって訊かれたら、なりたくはないけど。
頭の上にクエスチョンマークをたくさん浮かべた場地さんを一人用ソファに座らせ、カウンセリング用紙に記入をお願いする。その間に私は施術台の準備をしたり、着替えを用意したりしていると場地さんに呼ばれて振り返れば「書けた」と用紙をピラピラしている彼の姿が目に入った。
「ありがと」
「おー。こういうとこ初めてだからちょっとドキドキするワ」
「場地さんでも緊張するんだ」
「でもってなんだ、でもって」
「だって緊張とかしなさそうだから。はい、じゃあ全身するから服脱いでこっちの短パンに着替えてね。そこにあるガウン使っていいから。私は部屋から出てるから終わったら呼んでね」
「わざわざ出てかなくてもよくね?」
は? と言う私よりも早く「パンツ見た仲じゃん」なんて意地悪く笑っているもんだから、とりあえずチョップをかましておいた。私は場地さんのパンツ見てませんからね! あなたが一方的に見ていただけで!
痛いと喚いている場地さんを一人個室に残して外に出て、気づかれないように小さくため息を吐く。
わざとなの? それとも何の気もなしにこんなことするの? この間の彼氏彼女事件からどうしても無意識に場地さんのことを気にしてしまう。私のことからかって遊んでるのかな? それともカレカノ設定まだ続けてる? なんにせよ、私の心臓に優しくない。
「私ばっかり気にして馬鹿みたい……」
こんなんじゃだめだめ! 今から仕事なんだから! ふんっと気合いを入れるためにほっぺを叩く。、あなたなら大丈夫よ!
「着替終わったぞー」
「はーい」