【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第4章 私と場地さんと元カレと
「場地、ちゃんのこと好きだもんな」
「か、一虎さん……!」
「おー好きだぜ」
淀みのない真っ直ぐな声で「好きだ」と言われ、顔がぽぽぽと小さく熱を持つ。彼の言う好きはラブじゃなくてライクなんだろうけど、それでも自分に向けられた好意に照れを隠せない。この空間いたたまれない……!
ちらりと菅野さんと彰人の方へ視線をやれば、なんとも言えない顔をしていた。菅野さんは苦虫を噛み潰したような、彰人はばつが悪いのか気まずそうな、そんな顔。いや、そりゃそうよね。元カノと今カノ出会うって嫌に決まっているわよね。しかも今カノと職場が一緒だったなんて。
「てわけで一虎ァ、あんまちゃんに触んのなしな」
「嫉妬深い男は嫌われるぞ」
「うっせ」
そう言いながら小突き合っている二人に「そ、そろそろ帰りたい。です」と伝えるとやっとのことで一虎さんは私の頭から腕を退けてくれた。時間にしたら十分も経っていないのだろうけれど、精神的疲労度合いは一日仕事してきたときよりも疲れている。
一虎さんは腕を退けてくれたけど……ちらりと腰に回された手を見てから、場地さんを見上げる。先ほど不意に好きとか言われてしまったせいか場地さんとくっついている体の右側だけがやたら熱い。目が合うと「見送りするワ」と言ってペットショップの入り口まで歩くよう、私を促す。
急かされるように菅野さんと彰人に軽く別れの挨拶をしてから、ペットショップの出入口である扉へと二人で歩く。隣の場地さんは何故だかちょっと上機嫌そうに口角を上げて、鼻歌を歌っている。外へと続く扉を通り抜けると私の腰にあった手はスルリと離れていく。それを名残惜しいと思う私は変なんだろうか。
「ふはっ! ちゃん見た? アイツらの顔!」
「そんなことより! 何でデートなんて言ったの!?」
「ア? だってアイツなんだろ? ちゃん振った男って」
「そうだけど……」
「ちょっと鼻明かしてやろうと思ってナ」
「……なんで場地さんがそこまでしてくれるの?」
私が問いかけると場地さんは横目で私のことを見てからまた前を向いて「あー……」と何かを考えるように、少し首を傾げている。少しすると考えがまとまったのか、ぽつりぽつりと話を始めてくれた。