【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第3章 私と場地さんと飲み会と
この男はあああ! 私が睨み付けるも目を合わせず、店員さんから値段を聴いては飄々と支払いを済ませる場地さん。イケメンだなぁ……で終わると思ったか! 私は往生際が悪い女なんだ!
「おら!」
「うおっ!?」
財布から万札を取り出して場地さんの胸ポケットにねじ込む。ぐしゃぐしゃになったとか、そんなことはどうでもいい。要は場地さんにお金を出させないことが大事なのだから。
ここまで私が奇行を起こすとは思わなかったのか、目を瞬かせながら私をみていた。が、徐々に端正なお顔の眉間に縦線が深く刻み込まれた。
「女に払わせるわけねーだろ」
「バカにしないでくれる? 私だって働いてるんだから飲み代ぐらい出せるわよ」
「そうじゃねぇ。カッコつけさせろつってんだよ」
「これ以上かっこつけなくてもかっこいいから大丈夫大丈夫」
「ちゃんガンコな」
「そうなの、ちゃん頑固なの。その代わり家までゴキで送ってくれる? 今、すっごく風に当たりたい気分!」
「へーへー」
ぐしゃぐしゃの万札を財布に突っ込む場地さんを見届けて、一足先にお店から外へ出る。お酒で火照った顔に、冬の刺激的な風が突き刺さって思わず肩をすくめた。な、中が温かかったから外が余計に寒い……。ぶるりと身を震わせていると後ろから暖かな感触に包まれたのを感じて、少し視線を下にする。目に入ってきたのは──。
「マフラー?」
「さみぃんだろ? 巻いとけ」
「でもそしたら場地さんが寒いでしょ?」
「俺はいーんだよ。手袋あっから」
「よくなくない?」
「ア? それって結局いいのかワルいのかどっちだ?」
「ワルい。場地さんの頭が」
「喧嘩売ってンのか」
あはは、と上機嫌に笑う私を見て「ったく」とため息をついていた場地さんは私の分のヘルメットを取って、優しく被せてカチッとバックルもはめてくれた。言葉と行動が真反対だけど、これは彼がちょっと不器用なだけだってことに気づいたから全然嫌じゃない。
場地さんがバイクに跨がったのを確認して私もバイクに跨がってグラブバーを掴──もうとしたら場地さんに声をかけられて手を止める。