【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第3章 私と場地さんと飲み会と
ね? 簡単でしょ? と笑う私を呆けた顔で見ていた場地さんは勢いよく吹き出したかと思えば、大きく口を開けて笑い始めた。口から覗く八重歯がほんとにチャーミングだなぁ。
笑いすぎて涙が出たのか、目元を拭いながら未だにひーひー言っている。によによと口の端を上げながら楽しそうな場地さんを見ていると、彼は大きく息をついて──。
「やっぱちゃん、いい女だワ」
と言ってくれた。
「ふふ、でしょう?」
「ホント最高」
「今ならなんと! そんないい女のちゃんがフリーです」
「遠慮するワ」
「即答ヤメレ」
ムスッと唇を尖らせる私を見て喉の奥をくつくつと鳴らす場地さんに「腹減ったから何か食おーぜ」と促されて私も、もう一度メニューへと視線を落とす。まずはビールでしょ、あと枝豆と唐揚げに……と。
決まりました? おう。と短い会話を交わしてからベルで店員さんを呼ぶ。各々食べたいものを注文し終わってから場地さんに「何でバイクで来たんですか?」と訊けば頭の上で髪の毛をポニーテールにしている手を止めて、私の方を見てくれる。ってかちょっと待て、ガチ食いスタイルですやん。長髪の人が髪の毛結ぶのって本気のときのやつですやん。
「何でって、そうじゃねーとちゃん送ってやれねぇし」
「へ?」
「女一人で家まで帰らせるわけにはいかねーだろ」
「タクシー使うつもりですよ?」
「それならそれで別にいいしな」
「……場地さんもいい男ですね」
「おー場地さんいい男なんだワ」
「フリーですか?」
「フリーだけど、ゴリラみたいな女はちょっとなー」
「エー誰ノコトカワカンナーイ」
ふざけたやりとりをしていると「お待たせしましたー」と店員さんが飲み物を運んできてくれた。私はビールで、場地さんはジンジャーエール。お互いにグラスを持って、乾杯の合図と共にグラスを鳴らす。私の喉へと一気に流し込まれたビールの爽快感、一口目をシュワッと駆け抜ける炭酸の泡、そのどれもが仕事終わりの私を祝福してくれている。
くーっ、最高! 私は今日もよく頑張りました! えらい! そう、誰も褒めてくれないから自分で褒めるスタイルです!