【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第3章 私と場地さんと飲み会と
ふふ、と笑いをこぼすと「気持ちワリィぞ」なんて言ってくる場地さんに、あれ?優しいよね? と思わず自問してしまったけれど。
扉を開けて中に入ると、店員さんの元気な声とともに暖かな風が私たちを歓迎してくれる。あったかーい……と思いながらグローブを外して、場地さんに返す。返すときに少しだけ触れた場地さんの手がとても冷たくて、少し申し訳なくなった。私が運転したいなんて言っちゃったから……。
「どうした?」
「場地さんの手、冷えちゃったなって」
「ンなもんすぐあったまる。気にすんな」
「場地さんモテるでしょ」
「まあな」
「否定しないとかさすがです」
私の言葉に少し。ほんの少しだけ煩わしそうに眉根を寄せて、モテてもいいこと何もねー。と面倒くさそうに呟いた場地さんは、これまでにどんな面倒くさいお付き合いをしてきたのだろうか。私は非モテなんで? 想像外の範疇ですけどお? イケメンはイケメンで大変なのね。
通されたお座敷に向かい合うように座って足を崩す。場地さんにもメニューを渡してから、ペラペラとメニューをめくる。
「友だち付き合いユーセンすんなとか、もっと構えとか、セックスが淡白だとか、いちいちうるせぇんだよな」
「セックスの部分は聞かなかったことにしてあげますね。私優しいんで」
「まあ、向こうが勝手に好きってだけで俺からどうのこうのってはなかったしなー」
「うわイケメン乙」
「だからさ、彼氏と別れたつって大泣きしてたちゃん見てちょっと羨ましくなった」
思ってもいなかった言葉にメニューから顔を上げて場地さんを見ると、彼は私の方を見ていたらしく目が合った。すると見た目からは想像できないくらいふわりと、キレイな花のように優しく微笑むものだから思わずふっと息がつまる。……こんな笑い方もするんだ。
「俺もそんくらい誰かを好きになってみてーし、好かれてみてぇなって」
「そんなの簡単ですよ」
「ア?」
「場地さんらしい場地さんを好きになってくれる人、探しましょ」