【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第3章 私と場地さんと飲み会と
「二人乗り慣れてないんで、下手だったらすいません!」
「いや、ちゃんめっちゃ運転うまいワ!」
「泥舟に乗ったつもりでいてください!」
「不安しかねえー!」
普段より大きな声で話し、笑い合う私たち。これが出会って二回目の人たちだなんて誰が思うんだろう。恋人には見えないにしても、数年来の付き合いには見えるかも──ん?
「場地さん!」
「ンだよ!」
「彼女っているんですか! ニケツして怒られませんか!」
「いたら乗せてねーよ!」
「安心して事故れます!」
「事故んな! 千冬が泣くワ!」
「あはは! 大泣きしそー!」
目的地が近づいてきたので、速度を落として駐車場にバイクを停める。場地さんが降りたのを確認してから、私もバイクから降りてメットを外す。ミラーのところにメットをひっかけていると、私の隣でも場地さんが同じようにしていた。いやーたまにはスポーツバイクも楽しいな。カーブの曲がりやすいこと曲がりやすいこと。
ルンルンとご機嫌な私を見て場地さんは呆れたように笑っているけど、そんなことはどうでもいい。今から飲むぞー! とお店の方へ歩みを進めてながら、はたと気づく。……あれ? 場地さんバイクで帰るのよね? ってことは──。
「場地さん、飲酒運転はだめですよ?」
「しねーし」
「だってバイクで帰るんでしょ?」
「だから今日は飲まねーよ」
「じゃあビール奢れないじゃないですか!」
「ビール以外のセンタクシはねぇの?」
「あ、そうだ。今日は全部お金出すんで私の愚痴聞いてくださいね」
「だからセンタクシな」
「ここ、飲み物も食べ物も抜群に美味しいんで!」
ほらほら! と場地さんの背中を押して入店を促す。「仕方ねーなぁ」なんて言いながらもその声色は優しい。なに考えているかわかりにくいけど、とっても優しい人だってわかっちゃったから。