【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第3章 私と場地さんと飲み会と
「どうしました?」
「どうしたもこうしたも、ちゃんがそこ座ったら運転できねーし」
「いや、だから私が乗るって言ったじゃないですか」
「は? 乗るって運転するって意味かよ!?」
「オーイエス。普段はシャドウ乗ってるからスポーツバイク乗ったことないんですよねー!」
「は!? シャドウ乗ってんの!?」
「うん。私のマイハニー、HONDA・シャドクラッシック400、ボニーブルー×シャスタブルーのツートンちゃん」
「マジか……ゴツいの乗ってんな」
さ、乗った乗った! とタンデムシートをぽんぽんと叩きながら場地さんを促すと、少し迷いながらも後ろに乗ってくれた。うはー、私のと足付きが違う。っていうか同じ400CC? ちっちゃく感じるー!
後ろから「ん」と鍵を手渡されたので鍵を受け取り、指をさされた場所に鍵を差し込む。エンジンをかけると、私のシャドウとは随分音も、振動の伝わり方も違ってなんだか面白い。私がエンジンをかけたのと同時くらいに、後ろから声をかけられる。後ろを振り返ると先ほど鍵を渡されたのと同じようにグローブを差し出してくれていた。
何回か瞬きしてからフェイスシールドを上に上げて場地さんの顔を見やると、さも当然のように──。
「こんなクソ寒い中、素手で運転は無理だろ」
とほぼ無理矢理、私にグローブを渡してくれた。
「でも、それだと場地さんのグローブないですよ?」
「手ぇかじかんだつって事故られるよりマシ」
「確かにー。では、ありがたく使わせていただきます」
「おー」
いそいそとグローブを手にはめると、まだ場地さんの温もりが残っていてなんだかむず痒い気持ちになる。なんか余計に事故りそうで怖いわ。
場地さんがグラブバーと私の腰に手を回したのと、私の腰辺りを膝で挟んでニーグリップしたのを確認してからクラッチを切ってギアを一速に入れる。後ろから「意外と手慣れてんな」とか言う失礼な台詞が聞こえてきたのは、聞かなかったことにしようと思います。はい。普段乗ってるって言ったじゃん!
徐々にギアを上げて、加速し、風に乗り始めるとそれはもう気持ちのいいもので……。スピード感のないシャドウと比べると、もう歴然の差。疾走感が最高だねえ!