【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第17章 【番外編③】私と圭介とハジメテと
出会ったばかりの頃、めんどくさそうに元カノの話をしていた圭介の表情がどうしても頭から離れない。私は……彼女たちと同じように、めんどくさいと呆れられては見放されてしまうのだろうか。そんなことない、とは言いきれない自信のなさがここぞとばかりに顔を出す。
圭介に対してだけはどうしても臆病になっちゃうな。
「めんどいのも口うるさいのも好きじゃねーけど」
「あー……だよね。ごめんね変なこと聞い──」
「ちゃんにめんどくされんのも、口うるさくされんのも、嫌いじゃねーから」
だから、俺こそごめん。と申し訳なさそうに謝る圭介を見て、じわりと目尻に私の思いが溜まっていく。すぐに溢れ出たそれは私の頬を伝って、ぽとりと床に落ちていった。
続いて流れ出た雫を武骨な指で拭ってくれた圭介が優しく触れるだけのキスをくれる。言葉がなくても好きだと言う気持ちが伝わってくる甘い空気にそそのかされ、少し欲を言ってみようか。なんてまためんどくさい私が見え隠れする。
「ねえ」
「どうした」
「一個お願いがあるの」
「ンだよ、改まって」
「あのね」
キスより先がしたい。
「──ハ?」
「もう一度言おうか?」
「……聞こえなかったわけじゃねェよ」
そう言って今度は噛みつくように乱暴なキスをしたかと思うと、私を跨ぐようにしてソファに膝立ちする圭介。ソファの背もたれに両手をついて、覆い被さるように私を見下ろす彼の眉間にはシワがいっぱい。
「誘われるの嫌だった?」
「そうじゃねェ」
「私、そんなに魅力ない?」
「ンなわけねーだろ」
「体を重ねたいと思ってるの、私だけ?」
「だと本気で思ってンならちゃんはバカだな」
視界にちらつく艶やかな黒髪が大きく揺れたかと思うと、また噛みつくようなキスをされる。無理矢理私の口をこじ開けて舌を突っ込んできた圭介に少し驚きつつも、それへ応えるように私も自分の舌を絡める。
私の吐息までむさぼってしまいそうなほどの激しいキスに耐えられず、息苦しくなってきた私は圭介の膝をとんとんと叩いて意思疏通を図る。私の意図を汲み取ってくれたらしい圭介はゆっくりと顔を離しながら、──っはぁ、とやたらセクシーな吐息を吐いていた。八割りくらいそのセクシーさを分けてくれ。