【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第17章 【番外編③】私と圭介とハジメテと
「お待たせしましたー」
「あ、ビール来た来た!」
「相変わらずザルだな」
「ドラケンくんもでしょ?」
「場地とも飲むのか?」
「うん、たまに飲むよ! 圭介もお酒強いから楽しくって、つい飲みすぎて二人ともそのまま寝ちゃってさ。でもそれがなんかいいんだよね、緩い感じが」
先日、私の家で宅飲みした日のことを思い出す。一緒にグラスを傾けながらあーだこーだと他愛のない話をしては盛り上がっていたあの夜、日付が変わったことにも気づかずいつの間にかソファで二人寄り添って寝こけていたのはいい思い出だ。
思い出してふふっと笑う私を見て気持ち悪いという声がイヌピーから上がった気もするが、ちょっと首を絞めるくらいで許してやろうと思う。さっきも言ったけど愚痴を聞いてもらえなくなったら困るので。
「ねぇねぇ、二人は好きな人いないの?」
「ドラケンは彼女いるぞ」
「あっ、おい! イヌピー!」
「え! そうなの!? どんな人どんな人?」
「っはー……だから知られたくなかったんだよ」
ポリポリと頭をかきながら、どこか困ったようにも照れたようにも見えるドラケンくんの表情は、少し無愛想で大人びて見える普段とは違い、恋する少年って感じでいつもより可愛らしく見える。……まぁこんな図体デカくて龍の入れ墨が入ってる兄ちゃんを可愛いってのもいかがなもんかと思うけどね。
普段ではなかなか見られないドラケンくんの様子ににこにこしていると、大きな舌打ちが聞こえてきた。これさえも照れ隠しだとわかれば、やっぱりこの大男が可愛く見えてくるんだから、不思議なもんだ。
「で? どんな人」
「ノーコメント」
「えー! 何でー!」
「何でも」
「可愛い? 可愛い?」
「……かわいい」
「あらやだもー!」
もはや気分は親戚の子の恋愛話を聞くおばちゃんだ。そっかそっかぁ、ドラケンくんにも彼女がいるんだあ。これで残るはイヌピーだけだけど……もう数十年と一緒にいるが、彼の口から色恋の話を聞いた覚えは一度もない。残念ながら。
そう言えばタケミっちタケミっちってやたら話してる時があったわね。そのタケミっちって子がイヌピーの好きな子だったのかしら? タケミちゃんって名前なのかな? 会ったことないけれど。せっかくなら噂のタケミっちにも会っておけばよかったかな。イヌピーの好きな子気になる。単純に気になる。