【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第16章 【番外編②】私と圭介と金髪美女と
はあ。とあからさまなため息をついた私を見て、今度は餌を求める雛鳥がごとく一斉にピーチクパーチクと鳴き出した。
「なにそれ、ウケんだけど!」
「ジョーダンって知ってる? おねーさん」
「ヤバ、頭おかしいんじゃね?」
「そういうことでいいです。それじゃあ」
一目散に逃げ出そうとするも、あえなく失敗。腕を掴まれ、いつかの出来事を思い出して思わず虚無になる。今日のパンツは何色だっけ……って、今日はスカートじゃなくてパンツスタイルだから下着の心配はないや。
「何か?」
「そう急がなくてもよくね?」
「あそぼーよ」
「頭おかしい女と遊びたいなんて、変わり者ね」
「おねーさん、きびしー!」
「それとも私よりもよっぽど頭おかしいのかしら、おにーさんたち」
「はあ?」
「なに、こいつ? 遊んでやるつってるのに」
「誰も頼んでないでしょ。恩着せがましく言うんじゃないわよ、アタオカども」
掴まれた腕を振り切ればよろめく男は、ふらふらと千鳥足でこちらを睨んできた。いや、睨まれる筋合いはありませんけどね?
やんのかコラ。とガンを飛ばしながら軽く構える。道行く人がチラチラと物珍しそうにこちらを見ては足早に通りすぎていくのが視界の端に入るが、誰も助けてくれそうにない。か弱い女の子が絡まれてるっていうのに、甲斐性なしばっかり! 助けようとしなさいよ! 私か弱いんだから!
掴みかかってきた男の手を払って、そいつの顎に掌底打ちを決める。ゴッと派手な音と共に後ろへよろめいた男を見ながら、いーっぽ進んで二歩下っがる、なんてフレーズが頭の中で軽快なリズムが流れた。今の状況は全然軽快じゃないけどね。早く飲みに行きたいのにぐっずぐずよ、ぐっっっずぐず。
「警察呼ぶわよ!」
「こっちの台詞だわ!」
酔いも冷めたのか饒舌に話し始めた男はまぁまぁな正論をかましながら私へと大声で暴言を吐き始めた。……うん、このまま行くと私の感情が死ぬわ。ほんと。