【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第16章 【番外編②】私と圭介と金髪美女と
「俺のこと信用できねェ?」
「そういうことじゃなくて……」
「何が違うンだよ。ダチと会うのにもいちいちちゃんに言わなきゃいけねーってことだろ」
「ちが、そうじゃな──」
めんどくせェな。
「ぁ……」
ハッキリと耳に届いたその言葉は、私の心を抉るのに十分すぎて──私の周りだけ時が止まってしまってように、なぜか耳に音が入ってこない。頬を冷や汗が伝う感覚で我に返れば、ちょうど名前を呼ばれたところだった。
「ちゃん?」
「ごめ、ん」
「ア?」
「ごめん、もう言わないから。……ごめん」
圭介から何を言われるのかが怖くて、彼の返事を聞く前に勢いよく通話終了ボタンを押した。言い様のない脱力感に見舞われ、足から根が生えたようにこの場所から動けないでいると、私の左手に収まっていたスマホがブブブと動き出したことに驚き思わず手を放してしまう。
カタカタと床で揺れ動くそれを覗きこむように見ればイヌピーの文字。どいつもこいつもタイミングよすぎでしょ。
いまだ震えるそれを手にとって、先ほどと同じように通話ボタンを押す。ただ違うのはスマホ越しから聞こえる声が変わったと言うこと。
いつも通り、少しの倦怠感をはらんだイヌピーの声が私の耳へと転がり込んでくると、先ほどまで重かった私の体がふわりと空気の入った風船のように軽くなった気がした。
「、今大丈夫か?」
「うん、イヌピーは? 今どこ?」
「D&Dからドラケンと帰るとこ」
「ドラケンくんと……」
「ああ。それより──」
「イヌピー」
「? どうした」
いぶかしげなイヌピーの声に、うううと呻き声をあげる私。明らかに不審者感満載だけど、私の幼馴染みはそんなことで私を不審がったりはもうしない。幼馴染み強し。
「えと、仕事終わったんだよね?」
「ドラケンも誘う?」
「私まだ何も言ってませんが」
「飲みに行くんじゃないのか?」
「そうだけど……何でわかったのよ」
「いつものことだからな」
「……夜カフェかもしんないじゃん」
「カフェがいいのか?」
「居酒屋がいい」
あとドラケンくんも来てくれてら嬉しい。なんてぽそぽそと小声で伝えれば「ドラケーン、今から飲みに行くぞ」と、それはもう決定事項かのようにイヌピーからドラケンくんに伝えられた。いや、私としては嬉しいけれども。