【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第16章 【番外編②】私と圭介と金髪美女と
「どうした?」
「何が?」
「何か今日、変だろ」
「そう? いつもと一緒だよ」
「言いたくなけりゃいいけどよ、何かあったら言えよな」
「……」
言いたくないことがあるのは圭介の方なんじゃないの? そんなことが喉元まで出てきて、ぐっと堪える。いい年した女がみっともない。
「ちゃん?」
──と思えるほどの理性は、私にはもう残っていなかったみたいだ。
「圭介こそ、私に言いたくないことあるんじゃない?」
「俺? 俺は別にねェけど」
「今日、友だちと会うって言ってたよね」
「あぁ、言ったな」
「……その友だちって女の人?」
「そーだけど」
事も無げに答えた圭介に、チリリと胸のうちが焦げる感覚がする。これが嫉妬だと言うことに気づくのに、そう時間はかからなかった。
「何で教えてくれなかったの?」
「何をだよ」
「女の人と二人で会うってこと」
「ってーか、何でそのこと知ってンだよ」
「お昼に出かけたとき、たまたま見かけたの」
「ふーん」
「ねぇ、何で教えてくれなかったの? 言ってほしかった」
「何で?」
さらりとやってきた言葉にぐっと胸が詰まる。彼にとってはなんてことない出来ごとなのかもしれない、けど私にとってはやっぱり……。
「不安に、なるから」
「女だけどダチだって言ってンだろ?」
「圭介だってイヌピーのこと怪しんでたじゃん」
「そりゃーイヌピーくんがちゃんのこと好きって言ったから心配になるワ」
当たり前だろ。なんて言われたけど、当たり前なんかじゃない。その女の人が好きって言ってないから大丈夫だなんて、何でそう言いきれるの? そんなのわかんないじゃん、心配になるの仕方がなくない? 私の好きなあなたは、他の人から見ても魅力的な人なんだから。
圭介は何も言わなくなった私の言葉を少し待っていてくれたが、ついに痺れを切らしたのか小さなため息をついた彼に、思わず肩をぴくりと揺らした。直感でだめだ、と頭の中で警鐘を鳴らす。何がだめなのかまではまだ理解できていないけど。何かだめ。