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【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました

第14章 Epilogue


「赤ちゃん!」
「赤ちゃん?」
「元気に産んでほしい!」
「……それだけ?」
「それだけじゃねーよ! 赤ちゃん産むの大変なんだぞ!?」
「知ってるけれども」
「ウサギは五分で産むのに、人間は半日もかかんだぞ!?」
「いや、ウサギの分娩事情は知らないけれども」
「それに……痛いのは半分コしてやれねェから」

 そう言ってすり寄る圭介は素直なのに気まぐれな猫のよう。ふふ、と笑いながら彼の柔らかく癖のある髪の毛に触れる。心配そうに眉尻を下げた姿がとても愛らし──。

「高齢出産はもっと大変だって言うだろ?」

 くなんかない。

「ぶん殴るわよ! 高齢出産は三十五歳以上! 私はまだ三十三歳!」
「ン? そーなんか?」
「いい加減にしないとその口を塞ぐわよ、この三十路」
「お、何? キスなら大歓迎だワ」
「自分がしたいだけじゃないの」
「そうとも言うな」

 そうしか言わないわよ。なんて私が言葉を発する前に、圭介は自分から口を塞ぎに来た。ちゅっと可愛いリップ音と共に離れた彼は、ぺろりと自分の下唇を舐めてご満悦そうな表情。
 ほんとやだ。年下の癖に私より色気あるのほんとけしからん。

「もっと塞ぐ?」
「ガムテープでもいいなら」
「罰ゲームじゃん」
「今気づいたの?」
「前から知ってた」
「こいつ……!」

 ははは、とおかしそうに笑う圭介の脇腹を肘でつつく。この数年ですっかり私の扱いがうまくなった彼は、私のことをコロコロと手のひらの上で転がすように扱ってくる。全くもって解せぬ。
「そう怒んなって」
「ちゅーしたら機嫌が治るような安い女じゃないのよ」
「じゃあセッ──」
「口を慎みたまえよ、えろ猿」
「厳しー」
「お馬鹿」
「馬鹿っつー方が馬鹿なンだぞー」
「中学留年したやつに言われたくないわー」
「……それ誰に聞いた?」
「ドラケンくん」
「今度はドラケンか……」

 クソーと恨みがましそうに口をへの字に曲げる姿が可愛くて、その口の端を人差し指でつんつんとつつく。
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