【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第2章 私と場地さんとパンツと
下を向く度にはらりと垂れる前髪を邪魔そうに耳へかける姿は、やけに色っぽい。
「ちゃん、なんであんな喧嘩強いんだ?」
「私、空手やってて」
「俺も昔やってたわー」
「階級は?」
「あー……黒帯ってことしか覚えてねぇな」
「お! 私も黒帯」
「お、ちゃんやるじゃねーの」
「でしょ? 今度組み手でもします?」
「参りましたって泣かせちまうかもなー」
「は? 寝言は寝て言ってもらえます?」
ア"? と二人で睨み合ってから可笑しくなってきて、同時に吹き出す。可笑しくって可笑しくって、でも楽しくって。ちょっと前までの落ち込んでいた自分が嘘のよう。隣に並んでペヤングを食べている場地さんとの距離感が、なぜだかとても心地いい。
「あー食った食った」
「やっぱりまだお腹空いてるんじゃないですか?」
「ん? あー……まあ、腹いっぱいじゃないけど空いてはねーよ」
「なんか買ってきましょうか」
「いや、大丈夫だ。気にすんな」
気にすんな、って言われて気にしないやついるのかな? いや、いるかもしれないけど私には無理だわ。私は気にしちゃうタイプの人なのです。どうしよっかなー? うーん。
「あ!」
「ア?」
「今度飲みに行きましょうよ! ビール奢ります!」
「マジ?」
「まじ」
「オマエいいやつだな!」
「ちょろ」
「ア"?」
「あに点々をつけるな、点々を」
すぐメンチ切ってくるじゃん。カルシウム不足じゃん。そんなことを思いながらスマホをスッスッと操作してチャットアプリのQRコードを画面いっぱいに表示する。「ほい」と画面を場地さんに見せれば私の意図を汲んでくれたらしく、私と同じようにスマホを操作してQRコードを読み取ってくれた。