【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第2章 私と場地さんとパンツと
──私ももっと、自分に素直に生きてみようかな。名前も知らなかった第一印象最悪の店員さんが、私のちょっとした憧れの人になるのに大して時間はかからなかった。
ぐるぐる。麺がソースの色に侵食されていくのを見つめていると、すでに少なくなった私のペヤングの容器に、出来上がったペヤングが追加された。顔をあげると私の容器へ一所懸命ペヤングを移している場地さんが目に写った。そのままジーッを見つめていると、不意に視線が交わる。彼の片眉が不思議そうに吊り上がった。
「ンだよ」
「こっちの台詞ですよ。何してるんです?」
「そんだけじゃ足んねーだろ? 俺の少しやる」
「そしたら場地さん足らなくないですか?」
「俺のことは気にすんな」
「私少食ナノデ」
「はあ? ぐーぐー腹鳴らしてた奴が何言ってんだよ」
「場地さん、来世でまた会いましょう」
「殴ろうとすんな」
笑顔で握り拳を見せると、真顔の場地さんにたしなめられたので仕方なくスッ……と脚を上げる。するとこれまたすかさず「蹴ろうとすんな」とたしなめられました。仕方ないのでおとなしくペヤング食べようと思います。
ジャンキーなものを食べたいと思っていたし、ちょうどいいかもしれない。いただきますと呟いてからソースがよく絡まったペヤングを箸で掴み、それを大口開けて食べていく。もぐもぐと口一杯のペヤングに舌鼓を打っていると、今度は私がジーッと場地に見られる番の様子。横を見ると切れ長の眼がこちらを見ていた。
「んぐっ。どうしました?」
「いや、うまそうに食うなあと思って」
「食べるの好きなんですよね」
「ちゃん見てっと腹減る」
「ペヤング返しましょうか?」
「いや、それはらいらねーワ」
「あとで返してって言わないでくださいね」
そんな私の隣で場地さんも私に負けないくらいの大きな口で、ペヤングを食べていく。場地さんこそ、めっちゃ美味しそうにペヤング食べるじゃん。絶対これ、食べてもらってるペヤング幸せじゃん。ん? ペヤングが幸せ感じるわけないから、ペヤングのメーカーさんが幸せに感じるのか? まあ、なんでもいっか。とりあえず、場地さんはとてもペヤングが好きってことだ。