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【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました

第2章 私と場地さんとパンツと


 私に敬語で接することは諦めたんだな、と頭の片隅で思いつつ言われた通りペヤングへお湯を入れる。容器が温かくなっていくのを手のひらで感じていると、なぜだか涙が溢れてくる。場地さんが言っていた通り、今日の私はジョーチョが不安みたいだ。
 隣で子どものようにウキウキしながらペヤングが出来上がるのを待っている場地さんを横目で見やる。心の中でありがとう、とお礼を呟いてから私も場地さんの隣に腰を下ろした。

「あ。そういやナマエ、何てーの?」
「今さらですね」
「いつまでもオマエって呼ぶわけにはいかないだろ」
「です」
「ん、ちゃんね。俺は場地圭介、よろしくな」
「こちらこそ?」
「何で疑問系なんだよ」
「いや、よろしくするほどの付き合いになるかなぁ? と思いまして」

 冷てぇやつだなー。なんて場地さんはぼやいていたが、それよりもペヤングの湯切りの時間になったことの方が重要らしく「お!」と声をあげて足取り軽くお湯を捨てにいった。私もそろそろかな。
 立ち上がってシンクまで歩いていく。ソースの袋を開けて混ぜ混ぜしている場地さんの隣で、ペヤングの湯切りを──。

「あ」

 したかった。

「ん? どうしたアーーー! オマ、何やってんだよ!」
「湯切りに失敗しました」
「見りゃわかるわ!」

 もったいねー……とシンクに流れ出たペヤングの麺を見つめている場地さんに、なんだか申し訳なくなってくる。ペヤングぐらいで大袈裟な、とも思わなくもないけど。
 私の持っている容器はずいぶんと軽くなってしまった。中をチラリと除くと、半分くらいシンクに食べさせてしまったみたい。
 落ちたものは仕方ないとして、ゴミ箱どこだろ。片付けないと。そう思ってキョロキョロ辺りを見回していると、頭の上から「おい」と声が降ってきた。あらま? 今度はちょっぴり不機嫌そう。ぱしぱしと目を瞬かせる私のペヤングにソースを勝手に入れる場地さんは何がしたいのかよくわからない。

「先に食うぞ」
「え? でも片付けが」
「バカか。今が一番うめぇんだから今食うんだよ。ほら混ぜろ」
「あ、はい」

 口が動くよりも先に手が出てしまう、自分に素直な場地さんをちょっと羨ましいと思ったのは内緒の話。精神年齢が低そうだとかそんなことは思っていませんよ? ええ、断じて。
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