• テキストサイズ

【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました

第12章 私と圭介と万死一生と


「気持ちよくなってきた?」
「まさか」
「まぁ下を見たらわか──」

 あぁ、ついにそっちも触られるのか。一世一代の覚悟を決めたその瞬間──私の上に跨がっていた男が吹っ飛んだ。一メートルくらい。
 何言ってんだこいつと思われるかもしれないけれど、私も何が起こったのかまっっったく把握できていない。豆鉄砲をくらった鳩のように目を白黒させながら飛んでいった男の方を見ると、指一本動いていないようで……え? お亡くなりになった?
 そんな不吉な考えを巡らせている私が向いているのとは反対の方向から、地を這うような低い声が聞こえてきてびくりと肩を揺らす。この声は──。

「テメェら覚悟はできてンだろうな」
「……け、いすけ?」

 漏れるようにして私の口から出た言葉に圭介は視線だけで私を捉えると、こちらまで音が聞こえてきそうなほど歯を食い縛った。剣呑としたほの暗いその瞳に私まで心臓が縮んだ感覚に陥る。

「お前……ちゃんの元カレだろ? ちゃんに何してンの?」
「え、あ……え」
「何してンのか訊いてんだけど。聞こえねェの?」

 ア"? と言う声が早いか、バキャッと彰人のスマホが圭介に踏み潰されて壊れたのが早いか……ほぼ同時に行われた蛮行に、彰人は餌を欲しがる金魚のように口をパクパクとしかさせる他ないようだった。オージーザス。
 乱れた髪をかき上げながら汚いものでも見るかのように目を細めた圭介は、しゃがんでいた彰人を蹴飛ばした。かと思うと、男の人にとって大事なところを勢いよく踏み潰す。痛みから陸に釣り上げられた魚のように勢いよく手足をバタつかせる彰人を尻目に、圭介の長いおみ足がぐりぐりと容赦なくソコを責め立てる。
 私についているはずのないソレが踏み潰されるのを想像して、思わず自分の股に手を当てながら「ひぃ」と情けない声をあげてしまった。でも仕方ないと思う。痛い。想像しただけで、もう痛い。

「女の子に優しくできねーようならさァ──コレ、いらなくね? 男じゃねぇワ、お前」

 痛い痛いとわめきたてる彰人の声に混じって、遠くの方から「場地さーん! どこっスかー!」と叫んでいる千冬さんの声も聞こえてきた。……お店、放り出してきたのかな。
/ 175ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp