【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第12章 私と圭介と万死一生と
投げ捨てるようにして草むらに放り出された私は「いだっ!」なんて可愛げのない声を上げながらその場に倒れこむ。そんな私の上に股がってきたのは──鼻血の男。
「レディには優しくするものでしょ」
「男に回し蹴りする女はレディなんて言わねぇんだよ!」
「当たりどころが悪かったみたいでごめんなさいね。鼻血ブー太郎さん」
男の平手打ちが私の頬を捉えた。一発殴ったくらいでは気がすまないのか……フーフーと怒った猿のように息を荒げては、私の首を締め上げた。
脳に酸素が供給されなくなってくると、生理的な涙が浮かんでは私の視界を蜃気楼のように霞ませる。そんな私の見悶える姿がお気に召したらしく、スッと離された手によって一気に入ってきた空気にえほえほと思わず咳き込んでしまう。
こんな腹立たしいほどの苦痛があるのだろうか──ハラワタが千切れそうだ。
「そうやって苦しんでればいいんだよ」
「あら? 今からキモチイイことしてくれるのかと思っていたわ。それとも──下手なのかしら」
「……舐めた口聞いたこと後悔すんなよ」
「それならご心配なく。もうすでに後悔しているから」
そんな私の言葉に満足したのか、男たちは両の手を私の肌へと滑らせてはその感触を楽しんでいるようだった。ああ、キモチワルイ。
痕をつけているのであろう小さな痛みに眉根を寄せながら、この時間が早く過ぎるのを祈るほかない私はなんて無力なんだろう。
頭の上でピピとスマホの動画撮影が開始された音がする。下卑た笑みを浮かべる彰人と目が合い、全てを悟ったように目を閉じた。あーホント生きづらい世の中だわ。
「胸ちっさ」
「今までの男に育ててもらえなかったんじゃね?」
「ポルノの見すぎなんじゃない? 普通よ」
人が気にしていることをズケズケと……。そんなことを思いながら肌の上を蠢く生暖かい感覚に身震いする。まるで意思を持ったように動くそれは、なまめかしく私の体を這い回った。