【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第12章 私と圭介と万死一生と
「──彰人!?」
「チッ!」
私に向かって伸びてきた腕を払い落として、距離を取るために一歩後ろへ下がれば、どすっと何かにぶつかってしまった。この忙しいときに何!? と思いながら後ろを振り返る──前に背後からおもいきり口を塞がれ、ヒュッと息が詰まる。ついでに両手も掴まれて身動きが取れなくなってしまった。
変な汗が身体中から溢れだし、心が波立つように騒いで落ち着かない。
「ちゃーん? お前さぁ、最近一緒にいるアイツら何?」
前髪を思いきり彰人に捕まれて眉間にシワを寄せるも、口を塞がれているせいでもがもがと声にならない声をあげる他ない。いや、もう普通に痛いし。レディに手を上げるとかどういう神経してるの? 信じられない。
目尻をこれでもかと吊り上げ、怒りを込めて睨みつける。舐めてんじゃないわよ。
そんな私が気に入らないのか、前髪を掴む手の力を更に強めてきた彰人は、とても不愉快そうな顔をしている。不愉快なのはこっちだけどね。前髪だけハゲそうだし。
「刺青とかどう見てもヤバい奴だろ。股でも開いたのか?」
ドラケンくんとのことをバカにされて、カッと頭に血が上る。私がここ最近どんな気持ちでいたと思ってるのよ。その怒りが鎮まることはなく、むしろ頂点に達してしまった私は衝動的に脚を振り上げる。
体がうまく使えなくて、いつもに比べるとへにょへにょなその蹴りも、彼の大事なところに直撃したらしく──潰れた蛙のような声を上げてその場にうずくまった。ざまぁみろ。
後ろから「うわぁ……」と冷ややかな声が聞こえてきたのとほぼ同時。身動きが取れない中、できる限りの力で後ろの男に頭突きをかます。ゴッと鈍い音と共に口元から離れた手へ勢いよく噛みついてやった。
何だか女を捨ててしまっている気もするが、この状況ではそんな悠長なこと言っていられない。ヤるか、ヤられるかだ。
「いったい何のつもりよ! 頭オカシイんじゃないの!?」
自由になった口から紡がれるのは、もちろん反抗的な言葉ばかり。ひとつ言葉を発すると、芋づる式に次々と溢れてくる。