【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第12章 私と圭介と万死一生と
イヌピーとドラケンくんに迎えをお願いして早三週間。仕事の隙間を見てどちらかがお店まで来てくれているので、お店では「三股……?」「刺青……借金取り?」なんて噂が未だに囁かれている。否定したけど、あんまり聞き入れてもらえなかった……というか、好奇心には勝てなかったんでしょうね。
彰人からの嫌がらせ──って言っても証拠はないんだけれど。それも変わらず続いてはいるものの、二人が毎日迎えに来てくれるお陰で私の荒んだ心にも少し平穏が戻ってきた。
郵便受けも二人が開けてくれるし、私が部屋に入るまで付き添ってくれて……本当に頭が上がらない。
「せんぱぁーい」
「菅野さん、お疲れさま」
ちなみにD&Dでたまたま出くわしたあの日から、圭介とは一度も連絡を取っていない。それなのにスマホが通知を知らせる度に、圭介からのメッセージなんじゃないかとどこか期待してしまっている私がいて……本当に馬鹿だなぁなんて改めて思う。そんなことあるはずないのに。
「ちょっと聞いてくださいよぉ!」
「どうしたの?」
「最近、彼の束縛が激しくて!」
「そうなんだ」
「もうほんと嫌になっちゃいます! 別れたぁい」
それを私に話してどうなると言うのだろうか。むしろ私は、あなたのそんな態度のせいで困っていると言うのに。
心のモヤモヤを吐き出してしまえばいいのかもしれないが、臆病な私はそんなことできずに「大変だね」と声をかける他ない。私の返事が上の空なのに気づかないのか、尚も話続ける菅野さんにどうしたものかと苦笑いを続けていたら、スマホが機械的な音を立てて着信を知らせてくれた。
誰かわかんないけど、ナイスタイミング。
「もしもし」
「、もう仕事終わったか?」
電話の主はイヌピーだった。後ろでガチャガチャと賑やかな音が聞こえてくるので、まだD&Dにいるのだろう。
終わったよー。と声をかければ、少し困ったような声色で「仕事が立て込んでる」と一言こぼした。少しだけ眉根が下がったイヌピーを想像して、思わずふふっと笑いが漏れる。