【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第2章 私と場地さんとパンツと
小さい頃から今も空手を習っている。体を動かすのが単純に好きっていうのもあるけれど、試合とかで私より体の大きい人や男の人が目の前で倒れる姿を見ると、気分がスカッとするんだよね。……あれ? もしかして私ってヤバいやつだったりする? 頭沸いてる? こんな新たな発見はいらなかったなあ……。
「お前らこんなとこで何してんの?」
「お、一虎ぁ」
「店誰もいねぇのはダメだろ」
「あっ! 場地さん、俺店に戻ります! ちょっと早いけど、昼休憩とってください」
「おー、サンキューな」
「一虎君、行きますよ!」
「っていうかあの女誰?」
「指をささない!」
バタバタと嵐のように去っていった二人を見送ってから、私も立ち上がる。そろそろお暇しなくっちゃ。場地さんも休憩に入るみたいだから邪魔しちゃ悪いし。別れの挨拶を告げようと場地さんの方を見れば「ん」と差し出された何かを受けとる。
……ペヤング? 訳がわからなくて場地さんの方を見やると、彼も不思議そうにキョトンと目を瞬かせている。
「あ、もしかしてもう昼飯食っちまった?」
「いえ、まだですけど……」
「なら一緒にペヤング食おうぜ!」
「ペヤング……ですか」
「さっき泣かせちまったしさ、コレやるよ」
「いや、申し訳ないので私は──」
ぐうぅ
「……ぶっ、はは! タイミングよすぎだろ! 腹の音!」
「聞かなかったことにしてください……」
「っふ、くく……わかったから、とりあえずペヤング食おーぜ。一個やるから」
「……ありがとうございます。あと笑いすぎです」
「わ、わりぃ……ふはっ!」
「とりあえず一発殴ってもいいですか?」
止まない笑い声に少々イラつきながら握り拳を作ると、場地さんはもう一度謝りながら口元を片手で覆った。絶対悪いと思ってないでしょ。不満げに唇を尖らせる私を見て笑った場地さんはペヤングにお湯を入れるため、ポットがある方へ歩いていった。それに習うように私もあとを追いかける。
ポットから勢いよく出るお湯を見つめながら、私の心のモヤモヤを一気に取り払ってくれた場地さんみたいだ。なんてボーッと思う。
「次、オマエな」
「はーい」