【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第11章 私と圭介とイヌピーと
「痛いんだから、本気の殴り合いとかしないでよ……」
「……」
「私の言うこと聞かないあんたたちなんか、みんなまとめて蝋人形にしてやろうか!」
やっぱデーモンじゃん、なんて言う圭介は無視。もう本当に知らない! 口元押さえながら笑いを堪えているドラケンくんも知らない! もうみんな知らない!
「私、帰る! イヌピーついてきて!」
「明日からじゃないのか?」
「今日からにした! ドラケンくん、イヌピー借りてくから」
「おー。こっちは大丈夫だから、安心して連れてってやって」
「頼りになるのはドラケンくんだけだわ」
ほら、行くよ。なんてリードをひっぱる飼い主のごとく、イヌピーの手をひいて彼のバイクを裏口まで取りに行こうと歩みを進める。
圭介の横を少し通りすぎてから、足を止めて振り返った。未だに床に座り込んでいる圭介と目を合わせる。これで……これで最後にするね、話しかけるの。
「イヌピーがごめんね──場地さん」
さようなら。心の中で別れを告げて、D&Dを後にした。
二人して無言でバイクを走らせれば、私の家にすぐ到着する。一緒についてきてくれたイヌピーをせっついて、私の家のポストを開けてもらうようお願いすると中を確認して「何もない」と一言私にくれた。ありがとう、頼もしすぎて拝みたい気分です。
お礼を言った私の顔をじーっと見つめてくるイヌピーにどうしたのかと首を傾げれば、なあ……と言葉を続ける彼の言葉をゆっくりと待つ。
「場地のこと、好きなのか?」
「まさかぁ」
「嘘つきはモテないぞ」
「……なんでわかったの?」
「勘」
「野生の勘ですな」
「でも当たってる」
「……当たってるけど、諦めるからもういいの」
そもそも始まってすらいなかったのかもしれないけれど……涙と一緒にその気持ちは捨てたから。