【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第11章 私と圭介とイヌピーと
同じくらいの身長の二人がメンチ切りながら睨み合う姿が目に入って「おほぅ……」と言葉にならない声が口から漏れ出た。唯一の常識人であるドラケンくんは、少し離れたところから呆れた顔でことのなり行きを見守っている。お願い、諦めないでドラケンくん。二人を止められるのは君しかいないんだから。
私が覗いているのに気がついたのか、ドラケンくんは私の方を見て意味深に頷いた。いや、だから諦めないで。頑張って、命尽き果てるぐらいの気持ちで頑張って。
「俺はが好きだ」
「……」
「だから──」
バキぃッと鈍い音と共に、圭介の顔が横に振れる。私が目を見開いたのとほぼ同時──今度は圭介がイヌピーのキレイな顔面に拳をめり込ませた。
「ッのヤロ!」
「おい! 二人とも止めろ!」
ちょいちょいちょい。大の大人がこんな白昼堂々と盛大に殴りあいする!? 普通!
圭介に馬乗りになったイヌピーをドラケンくんが必死に引き剥がしている。これが地獄絵図か、とでも言いたくなる光景に大きく口を開けたまま固まってしまう。
元ヤンこわ……じゃなくて! 圭介と会いたくなくて隠れていたことも忘れて、思わず部屋から飛びだした。
二人を止めなきゃ。それしか私の頭にはなくて──。
「いい加減にしなさいよ、このバカアアア!」
ドラケンくんに羽交い締めされているイヌピーの鳩尾に拳を叩きつけ、今だ床に尻餅をついている圭介のすねを渾身の力で蹴り飛ばしてやった。
「ッ!」
「いっで!」
声にならない悲鳴をあげたイヌピーと、すねを押さえてうずくまっている圭介の前に仁王立ちし「あのねえ!」と今年一大きな声──と言ってもまだ今年始まったばかりだけど。鼓膜がビリビリと揺れるほどの声で私は二人に話しかけた。
圭介は私がいることを知らなかったのもあり「は?」と今の状況を飲み込めないでいるみたいだ。