【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第11章 私と圭介とイヌピーと
「よー、ドラケン。イヌピーくん」
やっぱり……圭介だ。声が聞こえただけで思わず涙が出てくる。もう私たちの関係が交わることはないんだな、って。
自分から突き放したのにこんなに泣いちゃうなんて、バカみたい。
「バイクの車検終わったぞ」
「ドラケンあんがとな。これ、差し入れ」
「サンキュー」
楽しそうな声……。私がいなくたって彼の日常が止まるわけではないし、彼が困ることだってない。そう思うと、私ってなんてちっぽけな存在なんだろうなあ。
先ほどまで落ち着いていた心が、どんどんと闇に引きずり込まれて帰ってこれなくなってしまいそう。
「……」
「場地、どうかしたか?」
「ん? あーいや。知り合いのバイクに似てンなぁと思って」
ドクンと強く心臓が跳ねる。隣に並んでたんだもん、私のバイクだって思われても仕方ない。実際に私も、隣にあるバイクご圭介のみたいだなあって思ったわけだし。
ここまでは想定内。私がここにいるのがバレなきゃいいだけの話なんだから。ふぅと短く吐くと「領収書取ってくる」と話すイヌピーの声が聞こえてきた。コツコツと近づいてくる足音に自然と扉の方へ顔を向ければ、澄ました顔のイヌピーと視線が交じり合う。
「……」
「イヌピーどうしたの? 領収書の紙ない?」
「」
「ん?」
「すぐ終わらせるから」
「ん? うん、わかった」
別にそんな気を使ってもらわなくても大丈夫なのに。そんなことを思いながら、領収書を持って店の方へ戻った行ったイヌピーを見送る。
また聞こえてきた三人の声に耳を傾けながら、目を閉じた。
「場地」
「あ、イヌピーくんありが──」
「お前、の知り合いなのか」
……は? イヌピーの発した言葉の意味を理解できず、閉じていた目を大きく見開くこととなってしまった。
ちょっと待って、なに? すぐ終わらせるっていうのは私の情緒を終わらせる算段だったの? そりゃないよイヌピー、あんまりだ。