【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第11章 私と圭介とイヌピーと
「し、知り合いだった?」
「過去形?」
「ちょっといろいろありまして……」
「いろいろ?」
「乙女の秘密と言いますか……」
「アラサーが乙女?」
「そこに引っ掛かるのね。じゃなくて! ドラケンくん、その人何時に来るの!?」
「あ? もうすぐつってたから……五分もしたら来るんじゃね?」
「ガッデム」
昨日の今日で私はどんな顔をして会えばいいのさ。いや、不細工な顔なんだけど。
心の準備ができていなさすぎて、ドクドクと心臓がいつもより強く脈打ち始める。剣呑とした雰囲気になるのは間違いない、こんなの誰も得しない。キョロキョロと辺りを見回すも隠れられそうなところがなくて眉根を寄せた。
早く……早く隠れないと。
「イヌピー!」
「どうした?」
「奥! 私、奥の部屋にいるから! 私がいるって絶対言わないでね!」
「場地となんかあったのか?」
「レディのプライベートは詮索しないこと!」
「レディ?」
「あーもう! とにかく私がいるのは内緒にして! ドラケンくんもね!」
行儀は悪いが二人の方を指を差してから、奥の部屋へと逃げるように転がり込む。事務室と休憩室を兼ねているこの部屋は書類などもきちんと整理されており、男二人にしては意外と清潔感溢れる場所になっている。
イヌピーはあんまり片付けとか得意じゃないけど、ドラケンくんは細かそうだもんね。そんなことを思いながら一人がけのソファに腰を下ろして、靴を脱いで体育座りをする。
腹の底から出てきた大きなため息が、私の憂鬱さを物語っていた。
「どうかバレませんように……」
自分の膝に顔を埋めて、今だけはいてくれ、と特に信じていない神様にも神頼みをする。この際、神様でも仏様でもなんでもいい。というかイヌピー様とドラケン様、マジでがんばってください。ドラケンくんはまだしも、イヌピーは私がここにいることを、ポロッと言っちゃいそうでちょっと怖い。
イヌピーってたまに空気読めない……し、ちょっとズレてるところあるからなあ。変なこと言いませんように。言ったらシバく。
ある程度の距離があるにも関わらず息を潜めて過ごしていると、来客を知らせるベルが私のところにも聞こえてきた。