【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第11章 私と圭介とイヌピーと
「」
「んー?」
「……大丈夫か?」
「……はは。ちょっとしんどい、かな」
「無理はするな」
「ん。ありがと、イヌピー。ちなみに今、私フリーなんだけどいい人いない? ストーカーから守ってくれそうな腕っぷしが強くて、同棲可能な人」
「ドラケンはどうだ?」
「お。今度飲みに行く? 行っちゃう?」
「飲みに行くのはいいけど、彼女にはいらねぇかな」
「同感」
「君たちは傷口に粗塩を塗りまくるタイプの人間か? おん?」
二人の対応にバキバキと拳を鳴らせば「そういうところ」と声を揃えて指摘されてしまった。ちぇっ。
「にしても……」
ちらり、と私のシャドウの隣に止まっているバイク──ゴキを見やる。色も一緒だし、カスタムも似てる。似てるけど……そんなまさかね。
「どうした?」
「ううん、別に。イヌピーほどハイヒール似合う人はこの世にいないと思って」
「? いつの話してんだ。今は履いてない」
「知ってるー」
代車で借りていたバルカン400ドリフターちゃんの鍵をイヌピーに返しながら、車検代を払う。この二人になら本当に安心してバイク任せられるわ。
愛機が戻ってきたことと、イヌピーとドラケンくんが仕事終わりの私を迎えに来てくれることが決まって、ここ最近では1番心が落ち着いた日になったかもなあ。まだまだ整理できていないこと……たくさんあるけど、ね。
それでも一歩前へ進めたことへの安堵感は、私の心を満たしてくれた。
「おーい、イヌピー。予定の時間よりちょっと早いけど、場地がバイク取りに来るって」
そんな満たされた心に一瞬で大きなヒビが入る。待って、今──場地って言った?
「わかった」
「ね、ねぇイヌピー」
「なんだ?」
「その場地って人のバイク……もしかして、コレ?」
ゴキを指差した私をキョトンとした目で見つめるイヌピーは、心底不思議そうな顔をして首を傾げている。ああ……この反応からして──。
「、場地の知り合い?」
当たりなんだろうなあ。