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【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました

第10章 私と圭介と確執と


「圭介と出会わなければよかったのに」

 私という器からこぼれ出た言葉に、ハッと我に返る。私……今、何て言った?
 体の奥深くから聞こえてくる心臓の音が、いつもより低く鼓膜へ響きわたる。手足は鉛をつけているかのごとく重くて、口の中は砂漠のようにカラカラだ。
 ハッハッと犬のように短い呼吸を繰り返しては、なんとか脳に酸素を送り込む。
 私──圭介にひどいこと言った。そう理解すればするほど、うつむいた顔を上げる勇気は枯渇していく。
 時間にしてどれくらい経ったのか、先に声を発したのは圭介の方だった。

「そうかよ」
「……」
「悪かったな。もう声かけねェから」

 そう言ってうつむいている私の横を通りすぎて、何事もなかったかのようにコンビニへと消えていった彼は……いったいどんな表情をしていたのだろうか。今の私のように、泣きそうな顔をしている──わけないか。
 でもいいんだ、これで。そう思っていないとやってられない。

「大丈夫。私は一人でも生きていける」

 男のすねかじってないと生きられない女じゃないから。圭介と初めて会ったときに、そう決心したもの。ああ、でも……。

「圭介みたいに素直に生きられなかったなあ」

 私から出た声はすぐ消えていったけれど、なぜか心の底に重くのしかかったような気がした。



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