【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第10章 私と圭介と確執と
「俺は都合のいい男ってわけだ」
「そういうことになるね」
「バカみてぇ」
「幻滅した?」
私の問いに答えることはなく、表情がどんどん無になっていく彼を見つめる。幻滅したって言われなくてどこかホッとしたような。でも幻滅したって言ってくれたら、もっとキッパリサッパリ諦めがついたのかもしれないな。
なんだか生殺しにされた気分。これは友だちを大切に思う、優しい優しい圭介を騙した罰なんだ。きっと。
「何考えてンだ?」
「それ、私に訊く?」
「ア?」
「圭介こそ、何考えてるの?」
「……」
「私も圭介の考えていること、わかんないよ」
わかんないから考えるのは止めにする。どれだけ頑張ったって、圭介の考えていることわかんないから……わかんないからネガティブな想像ばかりしてしまって、そんな自分に自己嫌悪する。
「何も言ってくれないから、わかんない」
「何も言わねーのはちゃんだろ」
「そんなことない」
私は言わないんじゃない、言えないの。
たった二文字の「すき」って言葉を言ってしまったら、圭介がどんな反応するのか怖くて言えない。断られたらどうしようって考えたら先へ進めないし、もし運良く付き合えたとしても、また捨てられるかもしれない。そんなの私──耐えられない。
その場面を想像しただけで心臓がわし掴みされたように、ぎゅーっと痛みだす。想像だけでこんなになっちゃうのに、リアルで起こったら私どうなるの? 無理、ほんと無理。怖い。
「何も言わないのは、圭介だよ……」
何で菅野さんと仲良さそうに話していたの? 夜中に二人で何していたの? 嫌そうにしていた、あの態度は嘘だったの? 全部全部全部、何も言ってくれない。
圭介は私のこと大事にしてくれているのかなって、ちょっとは思ってたのに……それだって私の思い上がりだった。誰にでも向けている優しさを、自分にだけ向けられているって勘違いしてた。だって彼が見つめる先にいるのは、私じゃないんだから。
こんなことなら、こんなに惨めな気持ちになるってわかってたら──。