【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第10章 私と圭介と確執と
「……でしょ」
「ア?」
「圭介には、関係ないでしょ」
やっとの思いで絞り出した声は微かに震えていた。それはどこか滑稽で、現実味のないものにさえ思えてくる。
圭介が少し眉根を寄せたが、今の私にはそんなことに気を使う余裕なんてない。一度こぼれてしまった言葉は、決壊したダムのようにどんどんと私の口から溢れて止まることを知らないようだ。
「私のことはほっといていいよ」
「なんでそんなこと言うんだよ」
「だって私と圭介の関係性って何? 知人? 飲み仲間?」
「ダチじゃねーのかよ」
「違う」
私はもう、圭介のこと友だちだって思えなくなっちゃった。好き、好きなんだよ。
「友だちじゃ、ない」
「……」
「それにさ、私と一緒にいたってつまんないでしょ?」
だからきっと、圭介は菅野さんのところに行っちゃったんだ。私なんかじゃ圭介に釣り合うわけないってわかってたけど、それでもやっぱり……と悲しくて胸の辺りが締め付けられるように痛い。
「だから──」
「おい」
「……」
「全部、本気で言ってンのか」
「……」
「本気で言ってンのかって訊いてんだよ」
イライラとした様子を隠そうともせず、荒々しい口調で言葉を吐き捨てた圭介。苦虫を噛み潰したかのような表情ですら絵になるなんて、いいよなぁイケメンは。
「本気だよ。逆に嘘つく必要あると思う?」
「……ならなんで、なんでそんな男と飲みに行ったり出かけたりしたんだよ」
「心の埋め合わせ、的な感じかな。振られたばっかで寂しかったし、付き合ってくれるなら誰でもよかったから」
出来上がった水彩画に水を垂らしたかのように……体の芯から冷えてくるような感覚が私の中で広がっていく。
この怒りにも似た悲しみは、私が心にも思っていないことを言っていることから来るものなのか。はたまた目の前にいる圭介が、そのような感情を撒き散らしているのに当てられてしまったのか……。どちらにせよ、いつもの心地いい空間はここには存在しない。
私たちの間を冷たい風が通り抜けた。
「はっ、ンだそりゃ」
先に声を発したのは、圭介だった。