【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第10章 私と圭介と確執と
「無言電話かかってきたこともあったっけ」
すぐに着信拒否したし、非通知の番号は鳴らないようにしたから……とりあえずはなんとかなったけれど。これも酷くなるようなら、スマホ買い換えて電話番号も変えた方がいいかもなぁ。はあ、とまた大きなため息をこぼす。
万が一に備えて、この陰湿な手紙は残してあるのだけれど……それもまた精神的にゴリゴリ削られていくのよね。箱を開ける度に「うわ……もうこんなに溜まったのか……」って思うの嫌すぎる。普通にツラい。
ずいぶんな量になってきたし、警察に行ったら周辺のパトロールとか強化してもらえるかな? そしたらちょっとは来にくくなる──。
「ん?」
封筒をしまい込もうとしたが、まだ封筒の中になにかが入っていることに気づく。いつもなら写真と暴言が書いてある紙だけなのに……。
ガサガサと中を漁ると、OPP袋に何か紙のようなものが折り畳んで入れてあった。首を傾げながら中に入っているものを取り出そうと、手を入れる。すると何かドロリとしたものが指に触れて、思わず肩を跳ねさせた。な、なに……いったい。
意を決してもう一度、右手を入れて折り畳まれた紙を取り出すと、私のてのひらにこぼれ出てきたソレ。
「──ッ!」
喉奥から何か競り上がってきそうな、生臭さ。そしてドロドロと粘着質な白い液体。それが男の人の体液だと理解するまでは──一瞬の出来事だった。
ショートした頭を復旧させるのに三秒ほどかかってしまった私は、弾かれるようにソファを立って洗面所へと走る。蛇口を捻って水を最大限流しながら、両手をこ擦り合わせる。服や床に水しぶきが飛んでいくのも構わず、これでもかと両手を洗った。
汚い汚い汚い! やだやだ、信じられない! 頭おかしいんじゃないのあいつ!
汚れも落ちてキレイになったはずなのに、まだ汚れているような気がしてならない。もっと汚れを落としたいと思って手に出したハンドソープを見て、先ほどのモノが手についてしまった感覚を思い出して息をのむ。