【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました
第10章 私と圭介と確執と
圭介とあまり連絡をとらなくなってから数週間。元々まめな性格ではない私たちは、そこまで頻繁にやり取りをしていたわけじゃないけれど……連絡が来ても忙しいからと飲みの誘いを断ったり、適当なスタンプを送ったりと、目に見えて返しが雑になった。と思う。
そんな私を圭介がどう思っているかは知らないけれど、圭介と距離を置くと決めてからは少し……ほんの少しだけ心に余裕ができた。
「──気がしたんだけどねえ」
家に帰るとポストに入っていたのは、今ではもう見慣れてしまった黒い封筒。消印も切手も何もないソレは、直接我が家のポストに差し込まれたことを告げていた。
はぁ……またか。部屋に入ってため息をつくという行為も、もはやここ最近の日課になってきてしまった。何も嬉しくないけど、こんな日課。
言い様のない嫌悪感をぶつけるように、ソファに座ってから乱雑に封筒を破り開けて中身を取り出す。中から出てきたのは私を隠し撮りした数枚の写真と、ビッチやぶおんな、猫かぶりなどの罵詈雑言が書かれた数枚の紙。
最初の頃は海の真ん中に放り出されたのかと錯覚するぐらい、呆然と立ち尽くしてはいたが──それにももう慣れてしまった。なにせ犯人もだいたい想像がつく。
「彰人がここに来た次の日から始まったもんねえ、コレ」
絶対あいつでしょ。犯人。これでもし違ったらそれはそれでホラーなんだけれど。
「ゴリラ女と馬鹿力以外にも語彙があったことに感心するわ」
なんて呆れはしたけれど、笑う気にはなれなかった。さすがに毎日毎日こんな嫌がらせを受けていたら、私だって精神すり減るのよ。そこまで鋼鉄のメンタル持ち合わせていないから。
誰かに付きまとわれているかもしれない──そう思いながら過ごす毎日は、糸を切られてしまった操り人形のように力なく、思わずうなだれてしまうものである。
毎日! 毎日毎日毎日! 暇人かってーの! いや、実際に暇人なんでしょうけど!