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【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました

第9章 私と圭介と不協和音と


 なんてことをメッセージに書くわけにもいかず、イエスと書かれたかわいいスタンプをぽんっと一個送っておいた。文章打たなくても会話が成り立つとか、文明の利器はスゴい。便利だ、便利。
 ベッドにスマホを投げて、私も同じようにダイブする。お風呂入らなきゃだけどちょっとだけ、ちょっとだけ横になりたい。

「なんかめちゃくちゃ疲れたな……」

 四肢を投げ出してベッドの上でゴロゴロゴロゴロ。何もせずにボーッとしていたらピロンと、メッセージが届いたことを知らせる効果音が部屋に鳴り響いた。
 圭介からかな? そう思ってスマホのポップアップ通知を見ると菅野さんの文字。どうしたんだろう、仕事のことで何かあったのかな。そう思ってスマホをたぷたぷ……メッセージアプリを開くと菅野さんの自撮り。

「え、ええぇ……」

 わかんない。今の若い子わかんない。
 そんなことを思いながら文章を読むと「今日もお借りしちゃいます」と一言添えられていた。慌てて先ほどの自撮り写真を見返すと、菅野さんと腕を組んでいる人の服は、先ほど会った圭介の服と同じものだ。
 彼の顔は写っていないものの、私が家に帰ってくるまでのこの時間で彼と同じ服を着た圭介とは別の人と出会う! ……なんてことはなかなか難しいだろう。そう思うと同時に、やっぱり圭介は私に会いに来たわけじゃなかったんだなぁ……と心がどんどん沈んでいった。
 ねえ、圭介。誰にでも優しくしちゃダメだよ。女の子は──っていうかね、私はすぐ勘違いしちゃう生き物なんだから。優しくされたら期待しちゃうんだよ?


「はあ……」

 このままずっと一緒にいられる──なんて都合の言い話があるわけないよね。別れがあるから出会いがあるし、出会いがあるから別れがある。それは彰人に振られたとき、私が身を持って体験したこと。

「……ちょっと距離、置こうかな」


 またメッセージ受信の通知音が鳴ったスマホの電源を落とす。そして根が生えたように重たい足を動かして、私は風呂場へ向かった。



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