第2章 アイツは、あぁ見えて甘えん坊 ( 隠の後藤 )
俺は運んだだけなのに、なのにめちゃくちゃ懐かれて…
意識を取り戻す迄の15日程、ここにお邪魔していたけどそれ以降は出会う度に抱き着かれるほどにべったりだった。
鱗滝さんに任せてから、俺は自分の師匠の元に行き
鬼滅隊に入るが、隠になる事を告げて…
手紙にて、お館様にもそれを承諾して貰った。
俺にはまともに鬼を殺すことは出来ない。
だが、アイツの手助けぐらいはしたいと思ったんだ。
あれから、3年後。
俺達は13歳になっていた。
「 うわ…こりゃまた、酷くやったな 」
「 あ、後藤! 」
隠の仕事を、鬼滅隊がする後片付けや、ちょっとした治療になる。
任務に呼ばれたから迎えば、傷だらけで木の傍に座り込んでるコイツを見て苦笑いが浮かぶ。
本人は嬉しそうにひらっと片手を向けるが、下級の鬼程度なら避けないはずの隊服がボロボロに裂けて血が手出るからな…。
直ぐに近付いて、蝶屋敷の人から貰っていた救急箱を開ければ、此奴は僅かに目線を外し、片手を額へと当てては泣きそうな程に声を震わせていた。
「 下弦の壱だった…。他の隊士の多くが…死んだ…。俺は…助けきれなかった… 」
「 …下弦なんだろ。仕方ねぇよ…。つーか、オマエが倒しただけマシだろ?倒せなかったら、もっと他の奴も死んでた 」
鬼舞辻の配下である、鬼。
下弦の中でも、壱という数字はそれだけ上弦にも近くなる。
俺は、そんな奴を隊士を庇いながら戦って倒した、コイツの方が凄いって思うけどな。
其れでも、目の前で殺されていく仲間を見て悔しいんだろう…
任務を遂行したはずなのに、いい顔はしない。
「 そんな顔するなよな… 」
この3年で、何度も何度もコイツの包帯を巻いているが…
俺より身体はでかくなったし、痛々しい古傷が残ると思う。
治るんじゃねぇのかよ…治ってねぇじゃないか…。
そんな文句すら言えずに、手を離してはそっと頭を撫でれば、多神は耳を後ろへと下げては、俺の肩口へと顔を埋めてきた。
「 泣きそうだ… 」
「 泣け泣け。ついでに、運んでやるから背中で寝てろ 」
「 そうする…… 」
背中を向ければ、素直に乗ってきたコイツをおんぶして、救急箱を持てば帰っていく。
「( オマエはよく、頑張ってるさ )」