第7章 兎は狼に勝てない( 錆兎 )
だが、問題は錆兎だな。
一口呑んでからの反応が全く無くなったことに、
鮭大根と酒を交互に食ったり呑んだりしてる義勇をよそに視線を向ければ、少し停止した後に動き始めた。
「 美味いのか、不味いのかは分からないが…。男が呑むものなら、俺は呑む!! 」
「 ……あ、はい。頑張ってな 」
此奴ば 男 ゙って事に拘るから、勝負心で呑むんだな。
もう少し、義勇みたいに楽しみながら呑めばいいのに、一気に喉へと流し込み、自分で酒を注ぎ呑む様子に少し呆れる。
「 錆兎、ゆっくりでいいんだ。食事を楽しみながら呑もう? 」
「 いや、俺は克服してみせるさ。酔うなんて情けない姿は見せられないからな 」
「 そうか… 」
早く呑むとそれだけ酒の周りが早くなる事を此奴は知らないだろう。
もう少し、兄弟子として呑み方を教えてやれば良かったのだが…
なんせ、此処まで脳筋だと思わなかったから、眉は下がる。
呑んでやる!と意気込んでる錆兎から目を離し、冨岡を見れば、彼は皿に入っていたサケ大根が無くなった事に分かりやすく落ち込んでいた。
「 義勇、頼めばいい。沢山食べても、俺達しかいないのだから気にする事はないだろ? 」
「 !!……サケ大根を 」
「 はーい!少し待っててね 」
義勇は直ぐに注文すれば、嬉しそうな表情を見せる為に俺もその顔を見てるだけで笑顔になれる。
少し会ってないだけで、随分と成長したなって思うからしみじみ感じていれば、カランと酒瓶が僅かに倒れる音に視線を錆兎へと向ける。
「 おれ、は……のむ…… 」
「 下戸なのか… 」
既に眠そうにしてるのを見て、倒れた酒瓶を起き上がらせ、少し離れた場所に置く。
「 錆兎はこのままでいいだろ。俺達は、料理を楽しもう 」
「 あ、嗚呼… 」
本当にいいのか?って疑問になってる義勇だが、俺も酒が呑み足りないから此処で帰りたくは無い。
俺は焼き鳥を食べ、義勇は鮭大根を食っては、時折復活した錆兎は酒を呑む。
そんなゆっくりとした時間が流れば、俺達が腹を膨れた頃には、錆兎はまともに立てなくなっていた。
「 義勇、俺は錆兎を宿に連れて行くから、先に帰るといい 」
「 嗚呼…承知した 」
「 それじゃ、夜道は気をつけてな 」
ちゃんと歩けてる義勇は、大丈夫そうだと思う
この勝負、義勇の勝ちだな
