第7章 兎は狼に勝てない( 錆兎 )
9月に入り、最終選別に必要な鬼の捕獲数を終えてから、
俺は義勇と錆兎を連れて赤ちょうちんへと来ていた。
「 さぁ、今日は俺の奢りだ!好きなだけ飲むといい 」
先に注文した為に、ズラっと並ぶ焼酎やら日本酒の数々。
此等を呑むことで、大人の仲間入りだと事前に言いながら来ていた為に、二人は其々に眉を寄せる。
「 …俺も、義勇も…今日が初めて呑むって分かってるだろうな? 」
「 そりゃ分かってるさ。だから奢るんだろ? 」
「 分かってねぇよ…なぁ義勇 」
二人とも俺と呑みたいが為に、二十歳になった後でも呑みたいのを我慢していたってのは可愛いじゃないか。
笑顔を向けてる俺とは違い、錆兎は隣に座る義勇を見るも、彼は酒瓶を見つめていた。
「 俺は呑む 」
「 呑むのか?? 」
「 流石、義勇!男前だな 」
「 男前だと!?なら、俺だって呑んでやるさ!男だからな! 」
昔からの性格変わんないなーって思いながら、容器へと注ぎ入れ、ふっとこのままでは流石に濃いだろうなって思い、錆兎へと視線を戻す。
「 錆兎、氷出してくれ 」
「 は?俺が氷柱になったのは、氷を出す為じゃないからな!!氷の呼吸。壱の方…華氷結!! 」
「 流石ー 」
錆兎は、水を極めた事で水の呼吸と、外気を瞬時に冷たくすることで、氷の呼吸までも使えるようになった。
氷柱と呼ばれるぐらいに、錆兎に氷技を出させれば右に出る者はいないだろう。
容器に花が咲いたような氷が入れば、先に入ってた日本酒を掻き混ぜ、二人の手元へと置く。
「 まだ暑いし、冷たいのがいいよな 」
「「 いただきます 」」
9月の夜と言っても、普通に蒸し暑いし、
冷たいのを呑む方が気分もいい。
俺も自分の容器に注ぎ入れ、割ること無く焼酎を口へと含めば、彼等もぐっと煽り呑んだ。
「 …! 」
先に反応をしたのは義勇の方で、彼は容器を置けば目線を入っている中身へと見る。
「 …美味しくはない 」
「 最初は苦さが苦手かもな?でも、料理と呑めば合うんだよなー。これが。…ほら、鮭大根だ 」
届いたつまみのような料理を並べては、義勇は喜んだ顔を見せ、箸を掴み一口口へと含む。
そしてすぐに酒を飲めば、彼は目を見開く。
「 うまい…… 」
「 だろ?日本酒は、料理に合う。勿論焼酎もな 」
此奴は呑兵衛になるかもな