第5章 狼は猪を育てる( 嘴平 )
〜 錆兎 〜
「 嘘だろ……。アイツ、2年も山に籠もるとか言ってんのか 」
隠である後藤が告げたのは、青牙が変な猪頭のやつを継子のように育てるって言った事だ。
継子って言うのは、柱が育てる隊士の事であり、
その才能が認められた奴が、柱の元で修行やら稽古を付けてもらうってことなんだが…。
俺の継子が、真菰であるように…
先に隊士となり、柱と同じか…
それ以上の実力があるアイツが継子を育てるってのは分からなくねぇが…。
「 急過ぎねぇかよ!!? 」
「 うん、それは思った 」
頷く後藤に、そんな冷静に判断するのは間違ってんだろ!!
「 巫山戯んな!!御前が2年も任務から離れたら、俺達が忙しいじゃねぇか!!お館様はなにを考えていらっしゃる!!? 」
「 お館様ば そうか、頑張ってね ゙だって 」
「 甘すぎるだろ!! 」
なにが頑張ってね、だ!
大体、元々柱ぐらいの実力があるのに甲止まりなのが可笑しいだろ!!
そりゃ、柱の数が揃ってるから入らねぇのは分からなくもねぇが!!
「 義勇もなんとか言ったらどうだ?? 」
「 ……俺は継子じゃない 」
※俺は継子にさせて貰えなかったから、口を挟む資格はない。
言いたい事はなんとなく伝わる為に、口数の少なさに眉は寄るが、
俺も同じく兄弟子ではあったが…隊士になってから剣術の稽古はそんなにさせてもらってないと思うと悩む。
「 くっ……。2年も、離れ離れになるのか… 」
「 は!! 」
意味を理解した義勇は、目を見開けたまたどんよりと落ち込んだ。
「 まぁ、また帰って来ると思うけどな。分かんねぇけど 」
「 いや、彼奴はやるって決めたらやる男だ。大体、移動距離が離れてるのにこっちまで戻ってくるかよ。面倒くさいとか言って居座るに決まってる 」
「 嗚呼… 」
頷く義勇に、やっぱりそう思うだろう…。
俺達は、会えないことに落ち込んでいた。
真面目に、次に会えたのは1年半後が経過した頃だった。