第5章 狼は猪を育てる( 嘴平 )
急いで走って向かった先には、5人の隊士は倒れ、
その内の二人から奪ったとされる刀を持って、両手を掲げている、猪の皮を被った少年?がいた。
直ぐにコイツがバケイノシシと言うのは察しがつく。
「 グワハハハッ!!この俺様の前に立ち塞がるなんて、愚かにも程があるぜ!! 」
「 …御前達、大丈夫か? 」
「 うっ…… 」
「 なんだオマエ!そいつ等の仲間か!? 」
命までは取ってない為に、このバケイノシシ…では無く、匂いからして普通の13歳前後の少年を殺す必要は無い為に、隠れていた後藤に彼等を任せては、向き合う。
「 手厚い歓迎をありがとな? 」
「 なに言ってんだ?はっ…テメェ、その耳と尻……。イヌか!? 」
「 …違うが、何でもいい 」
いちいち説明するのも面倒だと思い、溜息を漏らせばコイツは奪ったばかりの刀を掲げては鼻息を荒くさせた。
「 俺はこの森の、誰よりもつえぇ!そしてイヌヤロウにもつえぇ!!猪突猛進!!! 」
「( 面倒くさい子だな… )」
容赦無く向かって来た少年の攻撃を軽く避ければ、彼はごく普通に竹へと突っ込み、へし折っては気にもせずこっちに振り返ってきた。
「 猪突猛進!! 」
「 後藤、彼等を安全な場所で治療しててくれ。鬼の正体はコイツだろうから気にしなくていい 」
「 わ、分かった! 」
見た目通りに性格も猪らしく、俺だけに突っ込んでくる為にそのまま背を向けて走り出せば、コイツは追い掛けて来る。
これなら後藤達から然程、離れる必要もないなって思い距離を取ってから、竹林の中央にある開けた場所へと来れば向きを変える。
「 グワハハハッ!!ちょこまかと逃げんじゃねぇ!イヌヤロウぉぉお!! 」
「 そうだな、ちょっと相手にしてやろう。俺の部下をやったお返しぐらいは… 」
剣士である隊士5人を相手にし、頭突きだけで竹を折り、あの大木やら岩をもやったのもコイツだろう。
それはちょっと興味あると思えば、刀を抜く事なく向って来ては両手に持つそれを、同時に振り落とす少年の攻撃を交わしては腹へと蹴りを入れる。
「 ガハッ!! 」
「 すまん、手加減したはずだが。軽いから飛んで行った 」
ぶっ飛んだ少年は、そのままいくつかの竹を背中で折り、地面へと滑り止まる。
流石に、素人にやらかしたか?
