第5章 狼は猪を育てる( 嘴平 )
お館様から、鬼のような化物が出る噂があるからと、
其れの原因を調査する為に、俺は5人の隊士を連れ、
とある山へと向かった。
鬼であっても、無くても、そう言った噂があれば
直々に出向く必要があるのは少し面倒だと思う。
仲の良い隠の後藤も一緒に、山へと入ればそこは木々に覆われた場所であり、少し進めば竹やぶも綺麗だった。
「 ほぅ、良いところだな 」
「 呑気に観光かよ… 」
「 いいじゃないか。此方は余り来たことないんだ。俺は東から見てくる。君達は南の方から周ってくれ 」
「「 はい 」」
後藤の言葉にクスッと笑えば、5人の隊士達は揃って向きを変えて歩いて行く。
山に来ると故郷を思い出すから、ちょっと気分が高鳴る。
「 ん? 」
フッと歩いていれば、へし折れている大きな木を見て、やけに不自然な折れ方をしてることに気付く。
そっと折れてる部分を見れば、何度もぶつけた様な跡があり、まるで獣がやったように見える。
スンッと匂いをかげば、獣の皮を被る人間の少年の匂いがし、コイツがこれをやったんだと分かればちょっと感心する。
「 ほぅ?大木を折れるやつがいるのか… 」
鬼の匂いは全くしない為に、その木の側から離れて他の場所も見て回る。
大きな岩に痕が残ってるのもあり、他のところにも何度も修行に似た、身体を鍛えたような痕がある事に口角を上げていれば、人の姿を見かけた。
「 こんにちは。ちょっと宜しいだろうか? 」
青年の姿をしてる彼は、俺を見るなり頭上へと目線を向け口元へと手を当てる。
「 バケイノシシがいると思ったら…バケイヌも… 」
「 俺はバケイヌじゃないんだが… 」
耳を隠せばよかったかな、と思い少し後ろに耳が下がれば、一歩下がる様子を見て片手を向ける。
「 ちょっと待ってくれ。聞きたいことがあるんだが… 」
「 バケイノシシの仲間かよぉぉお!! 」
「 えぇ…… 」
逃走した青年にそのバケイノシシが何なのか聞きたかったのだが、それが出来なくなりちょっと肩を落とす。
風柱ぐらいの速さで逃げ出した彼に唖然となった後、自らの顎へと触れる。
「 バケイノシシ…。鬼なのだろうか? 」
と言うか、俺をバケイヌと言うなら…
もう少し人間寄りか?と考えていれば、隊士の悲鳴が聞こえてきた。
それに気付いて直ぐに、走り出す。
