第4章 兄妹の絆( 冨岡 )
〜 青牙 視点 〜
「 逃げるな!!逃げるな、鬼舞辻!!御前が近くにいることは分かってんだ!!! 」
追い掛ける俺の元へと向かって来る、鬼にされたばかりの者達。
まるであの日の父親を見てるようで、殺す度に胸が痛む。
鬼舞辻は姿を眩ませる為に鬼に、罪無き村人を鬼にしてるみたいだが、後始末をするこっちの身にもなれ。
「 クッソ……!! 」
最後の鬼を殺したところで、雪に付く血痕に地面へと刃を突き刺せば、膝を付き座り込んだ。
後、ほんの数刻早ければ追い付く事が出来たかも知れない。
あの兄妹を含め、この村人達も鬼にされる事は無かった。
俺が追い掛けたのが悪かったのか?引けばよかったのか?
「 っ……あぁぁぁあっ!!! 」
抑え切れない苛立ちに声を上げ、拳を雪へと殴り付ける。
鬼舞辻を直接見たのはあの日と、14歳の頃に町中で出逢った時ぐらいだった。
彼奴は、俺が生きてる事に驚いた顔を見せたが、其れからの姿は多少なりと変えているだろう。
そう言うやつだ…最初に見た時と年齢が違っていたんだからな。
腹が立つと吐き捨てては、立ち上がり刀を鞘へと戻していれば、春曙に連れられ走ってくる後藤を含めた隠の姿を見る。
「 多神!こんなところまで…オマエ、走るの速いって… 」
「 …ここも、任せてもいいか 」
「 それはいいんだが、怪我とかしてねぇか? 」
本当は、俺の手で埋めてやった方がいいのだろうが…
匂いが消えない内に、追いかけたい気もある。
過保護で心配する後藤の言葉に、視線を外す。
「 問題ない。こんな鬼にやられるはずがない 」
鬼は残らないが、食われて死んだ民間人は消えない。
俺が殺したようなものだと思っていれば、コイツは袖を掴み僅かに見上げてくる。
「 待てよ。そんな焦る事もねぇだろ?今の御前は頭に血が昇ってまともな判断が出来てねぇ。深呼吸しろよ 」
「 ……はぁー 」
軽く睨んだが、此の程度では引かないと知ってる為に深く深呼吸をする。
気持ちは落ち着き、確かに乱れていた呼吸も整う事が出来た。
「 ふぅー…ありがとう。少しは良くなった 」
「 おう!取り敢えず、上に報告だな 」
「 そうだな… 」
布越しでも分かるほどに笑顔を向けたのを見て、
また助けられたなって思う。