第3章 夢を見た時は( 隠の後藤 )
「 ん? 」
蝶屋敷にある縁側で、寝ているアイツを見掛けてそっと近付いてみた。
呑気に日向ぼっこしながら寝てる事はよくある事だが、顔を覗き込めば酷く眉を寄せているじゃねぇか。
嗚呼、こりゃ悪夢でも見てんだなって思えば
仕方無く、近くに腰を下ろしてはそっと頭に触れて撫でていく。
「 よしよーし。大丈夫だぞ 」
16歳にもなってべそべそ泣いてるなんて如何かしてるだろう。
今は任務中だが、冨岡さんや錆兎さんに笑われるぞーと思いながら触っていれば、眉間によってた皺は無くなり、スッと落ち着いた表情へと戻った。
「 とう、さん… 」
ポツリと呟いた言葉に、
そう言えば…コイツの両親や家族の話は聞いたことねぇなって思う。
いや、鬼滅に入ってる連中は、俺を含めて家族を鬼に殺されてる奴ばかりだから、コイツもそうなんだろうなって想像はつくけどな…。
其れでも、なんとなく知りたくなるんだよな。
軽く撫でていれば、コイツは長い睫毛を揺らしゆっくりと目を開けるなり、俺へと視線を重ねた。
眩しいのだろう、ちょっと身体を曲げて影にしてやればじっと見詰めてきた後に、縁側から身を動かし俺の太腿へと顔を埋めてきた。
「( おい…… )」
そこに埋めるか?ってぐらいの場所だから、眉を寄せていれば、太腿に頬を擦り寄せるこいつは呟く。
「 もっと…ナデナデしてくれ…… 」
「( なんだ、その可愛い言い方…まぁ、悪夢見た後だから思うんだろうな )…はいはい 」
突然の甘えはいつもの事だから、仕方無く撫でていれば、
こいつは少しだけ撫でられた後に、ゆっくりと身体を起こしては今度は、自分の膝へと片手を当てる。
「 背を向けて、座ってくれ 」
「( ここでか…… )」
もっと場所を選べって思うが、俺もコイツには弱い。
ぐっと奥歯を噛み締めては、
今度はこっちから動き、太腿に座っては言われた通りに背を向ける。
そうすれば、腹に両腕を回し肩へと額を当てて密着してきた。
「 悪いな…後藤……。ちょっと嫌な夢見て…さ 」
「 だと思ってるからいい。甘えとけ 」
「 ありがとう… 」
端から見たら俺の方が甘えてる様に見えるだろうが、
逆だからな!
コイツが、甘えてんだ。