第3章 夢を見た時は( 隠の後藤 )
少し頭に手を回して、軽く撫でていれば
肩口に顔を埋めたまま、此奴はポツリ、ポツリと話す。
「 俺は5人兄弟の三男で…両親がいたんだ。只の人間でもあった 」
人間であった事は、言われなくても気付いていたさ。
何処かで耳と尻尾は後から付いたんじゃないかなって思ってたから、逆に納得でしかない。
「 鬼舞辻に家族を殺され、父は鬼となって俺を襲ってきた。噛まれたあとに…日の出まで何度も殺していた…。…鬼を殺す度に、初めて…鬼になった父親を殺した時の感触が蘇って、嫌なんだ… 」
誰も人を殺したくはないだろ。
特に身内なら…。
鬼を殺せる為の、日輪刀を持ってないなら
日の出まで殺し続けるしかねぇ。
俺にはきっと出来ないが、コイツがそれを成し遂げたって事は、
相当辛かったんじゃねぇかなって思う。
「 そうか…。無理する必要、無いんじゃないか。嫌なもんは嫌だし、辛ければ辛いって言えば。俺は少なからず…オマエの弱音ぐらいは聞いてやれる立場と思うけどな? 」
伊達に一緒にいるわけじゃないんだ。
こうして甘えて来るからには、其れぐらいは言い合える立場だと思ってるからこそ伝えれば、コイツは耳を後ろに下げ、尾を揺らしては擦りついてきた。
「 ん、ありがとう…後藤。…なんか、お兄ちゃんみたいだ 」
「 そうか…( いや、兄弟ならあんなことしないだろ 」
前に、襲われた事を思い出せば…
如何してそんな発想になるか分からないが、コイツからすれば、甘えれる相手は兄なんだろう。
絶対、俺より兄貴質な奴が現れたら甘えそうだが…
今だけは、この立場も悪くねぇな。
「 なんか…話したら眠くなってきた。さっき…まともに寝れなかったら寝ていいか… 」
「 いやいやいやいや。流石に待て。俺を膝に乗せたまま寝るな。膝枕してやるからそれで寝ろ 」
「 ……分かった 」
ちょっと考えてから納得したのか、上から退けば
早々に狼の姿へとなり、大きく背伸びをし、座り直した俺の太腿へと顎を乗せてきた。
まるでデカイ犬でも飼ったように、頭からうなじにある飾り毛を撫でていれば、コイツは気持ち良さげに寝始めた。
「( いや、寝顔見てたら…こっちまで眠くなるな… )」
欠伸を噛み締めたが、耐え切れず寝落ちしてしまった。
まぁ、偶にならいいか。
コイツも落ち着いたみたいだからよ。