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転生侯爵令嬢の溺愛物語

第16章 忠誠を極めた攻略者


お披露目から早くも一ヵ月が過ぎた。

ずっと慌ただしかったから、やっとのゆったりした日常である。この穏やかさに幸福感を感じている。

そして、シェラザード様はあの日から、更に令嬢たちから熱い視線を一身に集めている。理由は、妖艶さ?

視線が合うだけで、腰が砕ける令嬢まで出る始末だ。

ちょっと、ジェラシー感じてしまう。でも、以前の典型的な悪役令嬢になってしまったら、私は身限られてしまうかもしれない。

そう思ったら、何も言えない。

今日も、来月早々に行われる試験に向けて、教えをシェラザード様に乞おうとする令嬢たちが群がっていた。鉄壁のように。

少し席を外していたら、いつもこんな状況になっている。以前の私への嫌がらせのような令嬢ならまだしも、こんな風に純粋に教えを乞おうとする令嬢には無碍に接したりしない。

真剣な眼差しで、勉強を見ているシェラザード様。強く握り締めた指の先が真っ白になっていて、私は力なく離れた場所に座った。

私も少し勉強が出来ない方が良かっただろうか?そうすれば、あんな風に・・・。

そんな事で悩む私の耳にワザと聞こえるように、意地悪なことを言うクラスの令嬢たち。

「あの二人なら、誰かと違ってお似合いよねぇ。」
「えぇ、本当だわ。私もあの二人なら、素直に祝福出来るもの。誰かさんじゃあねぇ?」

只管、黙ったままの私に、気が大きくなったであろう令嬢たちは更に私を乏す言葉を続けたのだけど・・・。

「お前達の祝福など欲しいと思わない。」

それは、平坦な声のシェラザード様のものだった。

「わ、私たちは別に・・・。」
「では、お前達の二人と言うのは、誰と誰のことだ?言って見ろ。」

あれ・・・声は平坦に聞こえるのに、凄く怒っている様に感じるのはどうしてだろう。

「そ、それは・・・。」
「私は言えと言ったんだ。」

いや、怒ってる!!

「私はアメリアを愛している。そして、公爵家としても私の未来の伴侶として認められた存在。その私の未来の妻に、お前たち如きの祝福も承諾も必要ないのに、何様のつもりだ?」

誰もがその静かな怒りに震えあがった。令嬢たちは、号泣しながら謝罪の言葉を何度も口にしている。でも、それが更にシェラザード様の機嫌を損なわせた。

「何故、私に謝罪する。」

それはそれは、教室の中が前世でいう冷凍庫並に冷えた瞬間だった。
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