第11章 初めてのお部屋デート
「いや、取り敢えず、今は分かった。」
ガッカリでもなく、至って真顔のままだ。シェラザード様は、理由があると言った。では、それはどんな?
ただ、シェラザード様は自分の欲を満たすが為だけに私を求めているのではないと?ならば、貴族としての何か、若しくは・・・私の為?
「シェラザード様、一つだけ聞いてもいいですか?」
「何だ?」
「期限はありますか?」
シェラザード様は、目を見張った。そして、私の頬を指で撫でながら、溜め息を吐いた。
「早ければ、来月の集まりの時だ。」
それは二週間後の、私たちのお披露目のこと。
「私とて、出来るなら十分な時間を与えてやりたいと思っている。だが、私の憂いが真実になったとしたら・・・アメリアに自由はなくなった、そう言っても過言ではない。私は、私の伴侶にはアメリアがいい。」
珍しく眉を下げ私に告げるその言葉は、心から私を求めてくれていることが理解出来た。
今でも、過保護なシェラザード様だ。その憂いというのが、私の意にそぐわないことも分かった。そして、自由がなくなった・・・なくなるではなく、なくなったと言った。
そんな状況になる未来を考えれば、必然とその原因が王族によるものだと分かる。
ならば、私がシェラザード様を受け入れるだけで、それを拒否できる。幾らシェラザード様でも、王族相手に我を通すのは難しい。
前世でも、周りに経験者は少なからずともいた。決して、多くはなかったけれど。でも、私を手離したくなくて何とかしようとしてくれているシェラザード様の気持ちを理解して私は決意しなければならないと思えた。
「もし、その時にシェラザード様の憂いが真実になろうとするなら、私は喜んで言う通りにします。い、今から、頑張ってその・・・私を磨きます。あ、いえ、そうではなくて、あの・・・。」
「ありがとう。私が初めて慕う相手が本当にアメリアで良かった。」
それは、優しい優しい笑顔だった。
「シェラザード様・・・その微笑みは反則です。素敵過ぎて、心臓が痛いです。」
「ハハ、そうか。だが、慕う相手にそう言われるのは私は嬉しい。もっと、甘やかせてしまいたくなる。ひょっとして、ワザとか?」
私に作為など無理ですから。でも、少しずつ慣れていきますね。・・・二週間しかないのかもしれないけれど。