第1章 銀髪のイケメンを見つけました
「あ、今のは秘密ですからね?家族には、他人には知られない事が条件で作っていますから。」
「・・・もう、無いのか?」
彼の手には、もう何も無かった。
「はい、どうぞ。これは口止め料ですからね。」
「あぁ、分かった。・・・これは?」
これも、私の大好物のスコッチエッグが挟んである。そもそも、そう好き嫌いがなかった。
「ひき肉の中にたまごが入っているコロッケですね。中の黄身は半熟なので、とっても美味しいですよ。」
齧りついた彼の目が、また大きくなった。そして、色っぽい吐息に思わず見惚れてしまう。
「これも、君が?」
「そうです。」
彼は何か思い出したかの様に、急に名乗った。
「名乗り遅れた。私の名は、シェラザード=アシュリー。貴女の名を伺っても?」
いきなりの名乗りに私は驚愕した。転生した私でも耳にした事のある、あの公爵家の嫡男の名だったからだ。
「えっと・・・その・・・。」
口ごもる私に、彼はこう言った。
「その見た目で判断すると、アメリア=サザライト侯爵令嬢ではなかろうか。」
疑問文ではなく、断定した物言いだ。そして、間違えてはいない。
「ご・・・ごめんなさいっ!!」
居たたまれなくなった私は、その場から、令嬢らしからぬ早業で脱兎の如く逃げ出した。
頭の中は、危険のアラームが鳴り響いている。あんなイケメンとお近づきになったら、絶対この先何か起こりそうな予感がすると。
そして、私は知らない。
あの綺麗なアメジストの瞳が細められ、口元は弧を描かれていたことを・・・。
逃げ出した私は、早々に教室へと戻る。その途中で、あの攻略王子に会う。一瞬だけ、そう一瞬だけ嫌そうな顔をする王子。
幼い頃から、付き纏っていたのが理由だろう。でも、入学してからの私は、関わることは皆無。今も、無表情で通り過ぎる。
幾ら王子だろうが、学園内ではただの同級生だ。一々、挨拶しなくとも不敬にはならないだろう・・・多分。
だから、王子も一瞬とはいえ、そんな嫌そうな顔をしなくても・・・と、思わなくもない。
教室に到着し、次の授業の準備をする。この国の歴史だけど、歴史ものって結構好きだったりする。歴女まではいかなくても、成績も良かったのだ。
それに、この世界でも赤点は存在する。気を引き締めなくては!!